本研究では形状的特徴の観点から道路ネットワーク整備において効果的な区間や必要な程度を示す指針を確立する目的のもと,道路特有の性質を持つネットワークにおいて,災害の影響を受けやすい脆弱性の要因となり得る形状的特徴を見出すための分析を行った.交差点に接続する道路の本数が限られることや地理的特徴などの空間的制約が存在する特殊な道路ネットワークについて,一般的な道路ネットワーク位相生成モデルを活用し,様々な大きさかつ密度の試算用道路ネットワークを生成し,格子,ツリー,車輪といった規則的なネットワークとの脆弱性評価の比較を行った.その結果,道路の特徴を持つネットワークは他の規則的ネットワークと比べて媒介中心性に基づく欠損に脆弱であることが明らかになった.最終年度では,ネットワークの部分的欠損による脆弱性評価指標について,既存の最大連結成分に接続性の観点を加えた最大固有値に基づく指標を提案した.ランダム順,次数順,媒介中心性順に部分的欠損が生じた際の影響を最大連結成分と最大固有値に基づく指標により,規則的ネットワーク,道路ネットワークについて評価した.最大固有値を考慮することで欠損後のネットワークの大きさのみならず,より強固に接続する部分の存在などの接続性観点が加味されたことを確認した.さらに,実ネットワークにおける検証のため熊本都市圏道路ネットワークを活用し分析した結果,最大連結成分,最大固有値に基づく指標ともに媒介中心性順の欠損が最も影響が大きいことがわかった.また,欠損するノードの位置関係と指標値変動の関係性を検証すると,都市圏の中心となり多くの交通量を持つ交差点の欠損が指標値の大きな変動をもたらしており,実際の道路ネットワークにおいて形状的特徴のもと重要な部分は交通機能としても重要な部分であることがわかった.
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