研究実績の概要 |
本研究では、飽和交通流率の基本値の低下の可能性を踏まえ、現在の我が国における実態の把握を行うとともに、これまでの都市部での観測だけでなく、ドライバー属性等に着目した分析を行うことで、現在用いられている基本値の妥当性と変化の要因を検討した。 まず、これまでに指摘されている飽和交通流率の低下は、都市部の他の信号交差点においても同様に低下が見られた。飽和交通流率の低下は車間の取り方の変化であるため、営業運転者であるタクシー運転者、休日運転者、高齢運転者に着目し、これらの運転者属性が多く含まれると考えられる地点において車尾時間とそれを構成する占有時間と車間時間の計測を行い、一般運転者との比較分析を通じて飽和交通流率への影響の可能性について考察を行った。その結果、タクシー運転者の平均車間時間は一般運転者より短く、休日運転者と高齢運転者は一般運転者の平均車間時間より長い値を示した。これにより、休日交通が卓越するような観光地や、高齢運転者の割合によっては道路計画・設計において影響を及ぼす可能性が考えられることを示した。 そこで、観光地につながる信号交差点において平日及び休日の調査を行い、飽和交通流率を算出した。その結果、平日と休日では休日の方が有意に車尾時間が長く、飽和交通流率が低いことがわかった。また、観測された車両を車籍地によって、県内車両と県外車両とに分類したところ、県外車両の方が車尾時間が長い結果となり、運転に不慣れなドライバーが飽和交通流率を低下させている可能性が伺えた。 1970年代から2000年代までに観測された飽和交通流率の中には都市部以外の観測結果も含まれており、それらは2,000台/青1時間程度の値を示している。今回、都市部以外(観光地を含む)の飽和交通流率も観測したが、総じて2,000台/青1時間を大きく下回っており、基本値から乖離している実態を示すことができた。
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