研究課題/領域番号 |
20K22444
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川口 真晴 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 研究員 (70884609)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
キーワード | 極端気象 / 都市 / 防災 / 大気現象 / 耐風設計 / 数値流体解析 |
研究実績の概要 |
本年度は2012年つくば竜巻と2019年台風19号を対象に,気象場の不確実性に関するアンサンブルデータの作成を開始し,流体解析ソルバCUBEを用いた気象場と市街地のマルチスケール解析で必要な種々の拡張機能の開発を進めた. 気象場の不確実性に関するアンサンブル解析としては,竜巻のケースでは直径に比べて小さな位置の不確実性を与えた計算を行い,経路・強風分布への影響について分析を行った.初期位置の違いによる台風経路・経路近傍における最大瞬間風速分布の不確実性は小さかったが経路中心からやや離れた場所において顕著な強風が見られる場所では,分布のケースによるばらつきが生じる場合がみられ,竜巻の突風被害のリスク評価において現象の不確実性の考慮をする必要性が示唆された.台風の解析については気象モデルNHMを用いた解像度5kmのアンサンブル変分法による1000メンバーのデータから,風速に基づくケース抽出を行い,最大側3ケースと最小側2ケースのダウンスケーリングによるアンサンブルデータの取得を開始した. 流体解析ソルバCUBEによるマルチスケール解析の機能拡張としては,強風被害リスク評価を最大瞬間風速だけでなく風圧力により直接的に行い,連成解析へ応用させるために,高詳細なLES解析を行うためのオフラインネスティング用のコード作成を行い,台風を再現した流入風を用いた実街区での風圧力評価の詳細な計算を行った(解像度約90cm).高層建物表面において風圧分布が適切に再現され,ピーク値として風圧係数-2.5程度(0.3秒平均値)の瞬発的な負圧まで再現できることを確認した.また上述のネスティングコードを用いることで街区形状を様々に変更した場合の市街地に発生する流速場と圧力場のアンサンブルデータの蓄積を行った.また台風時の構造連成解析を行うために応答解析コードのCUBEへの導入に着手した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発生しうる最大クラスの台風のアンサンブル解析や竜巻の経路に関する不確実性に関する解析については予定通り実施し一定の成果を得ているが,解析のためのコード作成が想定よりも工数を要したこと,さらに解析で得られるデータのサイズが従来より飛躍的に大きくなったため,スーパーコンピュータ上やローカル環境でのデータハンドリングに問題が生じ,解析サイクルの速度を落とさざるを得ない状況が生じた.この結果,アンサンブルデータの作成に遅れが生じている.これらのことからやや遅れていると評価した.現在,計算機上でのポスト処理の改良,ローカル環境のマシンのデータ処理を強化を行い,キャパシティコンピューティング性能を向上させるための環境整備を進めている.
|
今後の研究の推進方策 |
前期を目処にアンサンブルデータの収集を完了する.台風については特に強い強風が再現された上位25位ないし50位程度までのケースを抽出し、気象場から市街地までのマルチスケール解析を実施する.台風時の気象場の構造のうち境界層内のロール渦に着目して強風の定性・定量評価を行う.あわせて街区での突風発生については,建物や建物間の空間特性と風圧・風速とを関連付けた形で整理を行う.竜巻については,経路に加え,時間による竜巻構造の変化に対応するアンサンブルデータを取得し,内圧を考慮した被害評価と連成解析を実施する.後期は学術誌への投稿等,最終的な成果のとりまとめを中心に行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
参加を予定していた国際学会の一つが次年度へ再延期となり,今年度参加した国際学会についてもオンラインでの発表となったことから次年度への使用額が生じた.来年度の旅費およびデータ処理をより効率的に行うため物品費として使用することを計画している.
|