研究課題
建造物や屋外文化財の多くは，その内部に多数の空隙を有する多孔質材料であり，これらの材料の主要な劣化要因として塩類風化は広く知られている．塩類風化を抑制するためには，多孔質材料中の熱や水分，塩の移動を定量的に把握することが重要である．本研究では多孔質材料中における塩溶液の移動性状を把握し，塩溶液移動の駆動力の測定方法を確立することを目的とした．吸水時における溶液の移動現象は移動係数と駆動力の積で表される．そこで本研究では凝灰岩を用いた吸塩水実験と透塩水実験の比較から，吸塩水時における駆動力の塩濃度依存性について検討を行った．１）前年度に引き続き，NaCl溶液の変水位透塩水実験を行ったところ，高い塩濃度領域では塩溶液の透塩水係数と密度および粘性係数に相関がみられたが，低い塩濃度領域ではこの相関は認められなかった．特に，地下水程度の十分希薄な塩溶液は脱イオン水の透水係数よりも低いという結果が得られた．２）純水および0.6mol/LのNaCl溶液を用いた吸塩水実験を行い，その結果をもとにPhilip式に基づき吸水性（sorptivity）を求めたところ，NaCl溶液の方が純水より約1.2倍程度吸水性が高いという結果が得られた．なお，透塩水実験においても同様の結果が得られた．３）低い塩濃度領域において，塩溶液の透塩水係数が密度および粘性係数と相関が得られなかった理由として材料表面近傍に形成される電気二重層構造の影響が考えられた．この仮説を検証するため，試験体のゼータ電位測定を行ったところ，-40mV程度であることが明らかとなった．
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件)
Journal of Physics: Conference Series
巻: 2069 ページ: 012214～012214
10.1088/1742-6596/2069/1/012214
