研究課題/領域番号 |
20K22447
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
チェ ホンボク 東京理科大学, 理工学部建築学科, 助教 (60876077)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 溶融亜鉛めっき鉄筋 / 亜鉛腐食量 / 純亜鉛層 / 亜鉛/鉄合金層 / 許容腐食量 / 積算電流量 / 残存膜厚 / 標準偏差 |
研究実績の概要 |
本研究では,溶融亜鉛めっき鉄筋(以下,めっき鉄筋)を用いた鉄筋コンクリートの耐久性の解明を目的とし,[A:母材の腐食を防ぐめっき鉄筋の限界腐食量の評価],[B:亜鉛めっき層における腐食挙動の解明]を研究課題として進めている.現時点において[A]における研究成果を以下に示す。 <A1:電食試験を用いた性能評価手法の考案>電食試験を行う際に設定した積算電流量により,亜鉛皮膜のみが腐食する状態,亜鉛皮膜と母材がともに腐食する状態,母材のみが腐食する状態を模擬することが可能になった。また,コンクリートの性質(例えば、水セメント比)が異なると,同じ積算電流量に対するめっき鉄筋の腐食速度も異なることを確認し,めっき鉄筋の防食効果が期待されないコンクリート条件を確認できた。 <A2.1:亜鉛皮膜の犠牲防食が安定して生じる亜鉛腐食量>積算電流量におけるめっき鉄筋の表面性状,亜鉛腐食量を評価した結果,亜鉛皮膜は純亜鉛層と合金層において防食効果が異なることを確認できた。純亜鉛層は母材の腐食を発生せず,亜鉛が全表面にわたって均一腐食すること,合金層は亜鉛による防食効果が限定的であり,このため,ある時点になると,母材腐食を発生することを確認した。このことから,純亜鉛層は膜厚の全量が消耗するまで安定的な防食効果を有すると考えられる。亜鉛皮膜における純亜鉛層の割合を考慮すると,最大50%の亜鉛腐食量まで母材の腐食は発生しないと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究では,めっき鉄筋の腐食現象を理解するために,亜鉛皮膜による防食効果が終了するまでの所要時間の把握することが必要であった。このため,様々な腐食促進方法の内,実験手法が比較的簡単で,実験時間が比較的早い電食試験がめっき鉄筋の腐食現象の模擬に有効になると判断した。それに,積算電流量を用いることで腐食時間,腐食量,腐食速度などを評価できるため,電食試験はめっき鉄筋の防食性能評価に有効性を有すると判断した。その結果,上記に記載したものと同様の実験結果が得られたため,該当年度の研究はおおむ順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,該当年度の研究につながる課題を実施し,コンクリート中のめっき鉄筋が有する耐久寿命を評価することを最終目標とする。以下に今後研究の概要を示す。 <A2.2:亜鉛皮膜の欠陥部における亜鉛腐食量>鉄筋曲げ,外部衝撃などによって初期の亜鉛皮膜が割れると,該当箇所の母材は比較的腐食しやすい環境となる(局部腐食の発生).本研究では,欠陥部周りの亜鉛皮膜の腐食挙動を評価し,また,欠陥していない部位との違いを確認することで,局部腐食の影響を受けずに均一な防食効果を確保できる最小亜鉛量を検討する. <B1:コンクリート中の亜鉛の消耗における腐食挙動>積算電流量と亜鉛腐食量が有する理論値の関係を踏まえ,実験値における積算電流量と亜鉛腐食量の関係を評価する。これにより,コンクリート条件におけるめっき鉄筋の腐食速度を評価する. <B2:コンクリート中の亜鉛腐食物の体積変化>めっき鉄筋の腐食における亜鉛腐食物の体積変化を評価することで,限界腐食量に到達しためっき鉄筋のコンクリートとの付着性状および亜鉛腐食物の拡散性状を解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度において,当初は対面参加となっていた日本建築学会年次大会がオンライン参加に変更された。これによって,学会参加に関わる旅費を残すことになったため次年度使用額が生じた。現時点の状況では次年度もまたオンライン参加と予想されるため,次年度使用額は雑誌論文の投稿や英文原稿の翻訳に使用する計画である。 次年度助成金は,試験体製作,国内と国際雑誌への論文投稿,英文翻訳の費用に主に使用する計画である。
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