令和2年度 に中心的に実施したステップ1「東日本大震災の復興まちづくりを対象とした事例調査」と、ステップ2「被災が想定される地区の防災・景観両立型整備の事例調査」の2点を整理し、令和3年度は、防災と景観を両立するために実践された都市デザインの手法の課題と効果を考察し、事例のデータベースを作成した。 また、ステップ3「まちづくりのアクションリサーチ」については、南海トラフ大地震による津波被害が想定されている高知県宿毛市の片島地区堤防特別委員会の場で、令和2年度に、模型を使用したワークショップを1回実施した。その一定の成果は得られたが、COVID19の感染症対策の必要性により、ワークショップ参加者への個別ヒアリング調査を十分に実施できていなかった。 令和3年度に、さらに、アクションリサーチを推進するために、景観と防災を両立した防潮堤整備のデザインを三次元CGや図面などを用いたワークショップを実施した。それらのワークショップと、以前に行政が主催したコラージュのみを用いた県の説明会の2つの協議内容について、コーディングによる質的データ分析により比較し、参加した住民へのアンケートとヒアリング調査を行った。その結果から、津波被災想定地域の防潮堤整備を伴う景観まちづくりの行政と住民との協議において、模型と CG などの協議ツールを用いた新たな協議手法の有効性が明らかとなった。 以上の一連のプロセスを景観まちづくりの協議手順として整理した。これを用いることにより、各自治体の防潮堤整備を伴うまちづくりにおいて、住民と行政がそれぞれの持つ防潮堤とその周辺のイメージを共有でき、より円滑な協議により合意形成を図り、防潮堤の設計・工事を進めることができる。これらの成果を複数の学術誌に発表し、専門家や自治体職員への周知に努めた。
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