昇温脱離法(TPD)は様々な材料に適用可能な分析ツールであり,試料の化学的性質を明らかにすることができる.本研究では超高温・高感度なTPD装置の開発を通して,様々な材料中の微量ヘテロ元素種の定性・定量同時分析を実現することを目的とした. 2020年度は真空高温TPD装置の立ち上げを行い,不純物を含む炭素材料についてTPDによる分析を検討した.誘導加熱時の高温耐久性を検討することで,炭素・酸化物試料それぞれに適した試料台材料を選定し,新規TPD装置の製作を行った.また,窒素含有炭素材料について真空高温TPD測定を行い,窒素種が種々の含窒素ガスとしてそれぞれ異なる温度域で脱離することを見出した. 2021年度はこれをベースに種々の炭素試料について測定を行うとともに,他のキャラクタリゼーション手法やDFT計算と組み合わせることで測定結果の詳細な解析を試みた.まず,特定の温度まで熱処理したサンプルについて,CHN元素分析およびXPS測定結果と突き合わせることで,窒素由来の全てのガスを定量できていることを確認した.さらに,XPS測定結果をピーク分離し,窒素導入形態ごとに定量分析することで含窒素ガスの由来を詳細に特定した.また,DFT計算を用いて脱離挙動のシミュレーションを行った.その結果,XPSとTPD測定から得られた結果とよく一致し,実験結果がDFT計算によりよく説明された.さらに,窒素含有量が微量のサンプルの測定を行い,本法を用いることで従来法よりも高精度な定性・定量が可能であることを見出した. 以上のように,2年間の本研究を通して,当初の目的である超高温・高感度の昇温脱離分析装置の作製に成功し,窒素含有炭素材料の新規分析手法を提案することができた.
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