研究課題/領域番号 |
20K22461
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 弘毅 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (80876706)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 蓄電池材料 / デュアルカチオン / スピネル酸化物 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
次世代蓄電池の実現は,既存の枠にとらわれない新たなアプローチが必要である.本研究は2種類のキャリアを併用するデュアルカチオン蓄電池の実用化に向け,理論計算と実験の両面から,正極材料候補を熱力学・速度論の観点から探索し,高性能を有する蓄電池材料の設計指針を確立することを目的にしている. 初年度では,Li-Mg系に着目し,正極材料の実験的合成および第一原理計算による相安定性評価を行った.ゾルゲル法を用いて,スピネル型MnO2をベースとした酸化物の低温合成を試みた.その結果,Li-Mn-OとMg-Mn-O系は合成できるが,LiとMgを同時に含んだLi-Mg-Mn-O系は単相にならず,スピネル相と岩塩相の混在物になっている.これは価数の変化に伴うJahn-Teller効果によるMnO6八面体ユニットの構造不安定性に起因すると考えている.MnO2の安定性を改善するため,3価MnのJahn-Teller効果を抑制可能性があるFe元素をMnO2ホストにドープしてみた.その結果,Li-Mg-Fe-Mn-O系では,LiとMgの任意比率でも,スピネル構造の単相を合成することに成功しており,考案したアプローチの有効性を実証した. 酸化物正極の安定性を熱力学の観点で考察するため,汎関数密度法を用いて,第一原理計算で,各相の生成エネルギーを求めてみた.その結果,Fe-Mn-O系では,平衡状態では,正スピネル構造ではFe-OとMn-Oの両端の組成が最も安定であることが示され,Fe-Mn-Oスピネル相は準安定相であることが示唆された.Li-Mg-Fe-Mn-O系正極の構造を解明するため,XRD構造解析やX線吸収微細構造解析を行う予定である.また,正極材料の電極特性を評価するため,合剤電極を製作し,室温や中温環境における充放電容量とサイクル性を調べる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は計画通り,試料の実験的合成と第一原理計算による考察を遂行している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は継続してLi-Mg系における電極特性評価およびメカニズムの解明を進めるほか,ほかのカチオン系への拡張を行う予定である. また,正極と組み合わせて電池システムを構築するため,金属負極と電解液系の調査の必要性を感じており,並行して推進していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
化学合成用の試薬など消耗品,計算用のハードウェア,ソフトウエアの購入および成果発表用の旅費などに使用する予定である.
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