塩化物浴を中心とした濃厚水溶液における金属クロムのアノード溶解挙動を調査し た。電極の不動態化を抑制し高効率なアノード溶解を可能にする電解液の開発に取り組み、対反応であるカソー ドでのクロム電析と組み合わせることで、濃厚水溶液を用いる高度な新規電析プロセスの構築を目指した。 一般的なめっき浴とは異なる高い濃度で溶質イオンを含む濃厚塩化物 浴においては、金属クロム表面の皮膜が不安定化することで、2価あるいは3価のクロムイ オンとして金属クロムをアノード溶解させることが可能であることがわかった。金属クロムは不動態化皮膜のために水溶液中では電気化学的に不活性であり、アノードとして使用することはこれまで不可能であった。金属クロムめっきプロセスのアノードとしては、浴分 解をアノード反応とする不溶性のカーボンやチタンなどの電極が用いられており、高いセ ル電圧のために電力源単位が高いという課題を抱えていた。本研究で示された可溶性の金 属クロムアノードの使用可能性はこれらの課題を解決し得ると考えられ、濃厚塩化物浴の もう一つの特徴である、3価クロムを用いた金属クロムめっきが可能であることと組み合わせることで、環境負荷の小さいクロムめっきプロセスの構築が期待される。
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