研究課題/領域番号 |
20K22469
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中谷 都志美 広島大学, デジタルものづくり教育研究センター, 特任助教 (80882050)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ゴム・エラストマー / X線CT |
研究実績の概要 |
工業製品に多く使用される高分子材料は、機能性を複合させた多成分系材料であるがゆえに、材料の表面・界面の構造や物性には、機能性の向上と機能劣化の促進という重要因子が共存する。 本研究では、未だ十分に解明されていない高分子材料の界面構造や分子の分布、接着現象のメカニズム解明からアプローチする。2020年度は、ゴム・エラストマーモデル材料の環境温度に対する運動性の変化について、パルスNMR、高分解能固体NMR測定を行い、高分子運動と構造変化に関する評価と、材料中の空隙や接着などの界面状態の分析手法の検討を行い、以下の成果が得られた。 (1)天然ゴムの環境温度に対する結晶性の評価をパルスNMR測定により行った。室温保管したサンプルと低温保管したサンプルのパルスNMRを-30℃で行い、それぞれの緩和時間を評価することで、天然ゴムの低温結晶性についての議論が可能であることが見出せた。 (2)天然ゴムの低温結晶性については、ゴムのモデル材料の配合比からポリマーの架橋密度や架橋長さが影響していることが分かり、高分解能固体NMRでの緩和時間測定により、イソプレンの各官能基の運動性について評価を行った。 (3)高分子材料の空隙や接着などの巨視的な構造解析や、界面・分子運動などに関する明確な情報を得ることを目的として、機器分析への検出感度の向上を図った造影剤の検討を行った。具体には、多成分系の高分子材料に造影剤マーカーとして重元素を導入することでX線CT撮像の検出感度が向上した。本手法をゴム材料の表面・界面挙動の観察に展開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然ゴムの低温結晶性は、ゴムのモデル材料のパルスNMR測定から得られた緩和時間の結果から、ポリマーの架橋長さや架橋密度に相関があることが分かった。架橋長さが長く、架橋密度が高いものほど低温結晶性が低く、架橋長さが短く、架橋密度が低いものほど、低温結晶性が高いことが明らかとなり、本評価法の権利化に向けて準備を進めている。 また、機器分析への検出感度の向上を目的として、多成分系の高分子材料に造影剤マーカーを導入し、X線CT撮像を行った結果、高コントラスト比を示すCT解析画像が得られ、本手法については特許出願を行い、第70回高分子学会にて発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
天然ゴムの環境依存性については、低温特性と高温特性の双方での評価を検討している。まず、低温特性評価については、ポリマーの架橋鎖の長さや密度に着目し、パルスNMRや高分解能NMRにより低温時の運動性の変化について評価を行った。 今後、ポリマー種やフィラー種が与えるゴム材料の温度特性をパルスNMRや高分解能NMRを軸とした運動性の評価と、検出感度の向上を図った造影剤により高コントラスト化を狙った材料のSEMやX線CT撮像を詳細に解析することで、これまで不明瞭であったゴム・エラストマー材料の機能劣化のメカニズムを解明する。
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