研究課題/領域番号 |
20K22476
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
大柳 洸一 岩手大学, 理工学部, 助教 (50881223)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | スピン流 / スピントロニクス / 磁性ガーネット / 常磁性体 / スピンホール磁気抵抗効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年優れたスピン流輸送特性を示すことが明らかになった常磁性絶縁体と金属の界面でのスピン流輸送の原理解明である。 本プロジェクトの初年度である該当年度は、典型的な常磁性絶縁体として知られるGd3Ga5O12(GGG)と常磁性金属Ptとの接合系でのスピン輸送原理の解明を目指し、以下の実験を行った。 1.常磁性絶縁体GGG基板上にPtをスパッタリング法により成膜した後、磁気抵抗を測定するためのホールバー形状をフォトリソグラフィー法とアルゴンミリングによって成形した。これにより、清浄なPt/GGG界面が実現された。 2.上記試料を用いて低温における磁気抵抗効果の測定を行った。その結果、磁場の印加方向、強度に依存した未知の磁気抵抗効果を見出した。理論計算と比較することでその起源が、常磁性磁化によるスピンホール磁気抵抗効果であることが明らかになった。スピンホール磁気抵抗効果は、界面でのスピン注入効率を定量評価することができる手法である。これを利用して、本効果が界面において磁場が誘起する磁化に対するスピン移行トルクによって生じることがわかった。これは、常磁性絶縁体/金属界面でのスピン輸送の原理解明に繋がる結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
常磁性絶縁体/金属界面におけるスピンホール磁気抵抗効果を発見しただけでなく、本効果がスピン移行トルクによって生じることを明らかにた。これは、本研究の目的である常磁性絶縁体/金属界面でのスピン輸送の原理解明に繋がる重要な成果である。 上記のことから、常磁性絶縁体/金属界面におけるスピン輸送原理を解明するとした本研究の目的を達成するために顕著な進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、発見した常磁性スピンホール磁気抵抗効果の温度依存性に焦点をあてる。観測された信号の温度依存性は理論モデルの予想と異なる振る舞いであった。これは、高温においてスピンホール磁気抵抗以外の効果が重畳している可能性を示している。そこで、Ptの膜厚を系統的に変えた試料においてスピンホール効果の大きさを測定し、高温での信号の起源を明らかにする。
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