研究課題
近年、これまでスピン流を長距離に運ぶことができないと考えられてきた常磁性絶縁体が実は優れたスピン流の導体であることが明らかになり、常磁性体を用いたスピントロニクスに注目が集まっている。しかし、常磁性体を用いたスピントロニクスは実験・理論ともに十分な研究が行われておらず、金属界面でのスピン移行の原理すら明らかになっていなかった。そこで本研究では、常磁性絶縁体と金属との界面におけるスピン輸送原理を解明することを目的とした。本年度は、昨年度に引き続き、常磁性絶縁体Gd3Ga5O12 (GGG)と常磁性金属Ptとの接合系における磁気抵抗効果の温度・磁場に関する系統的な測定を行なった。その結果、以下の成果を得た。・2 KにおいてPt/GGGで観測された磁気抵抗効果の高磁場依存性を調べた結果、9T以上の高磁場領域において磁気抵抗が減少する振る舞いを示した。この領域では常磁性磁化が既に飽和しているため、この磁気抵抗の振る舞いは常磁性磁化とPt中の伝導電子の間のスピン交換で生じる常磁性スピンホール磁気抵抗効果では説明できない。・Pt/GGGで観測された磁気抵抗効果の温度依存性を調べたところ、300 Kの高温においても磁気抵抗効果を観測した。高温で観測された磁気抵抗効果の寄与と極低温領域の磁気抵抗の差分を取ると、その温度依存性が常磁性スピンホール磁気抵抗効果の理論式から予想される温度依存性と一致した。これは、測定温度領域において常磁性スピンホール磁気抵抗とは異なる磁気抵抗が存在することを示唆する結果である。本研究で得られた成果はPhysical Review B誌に掲載された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Physical Review B
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Nature Communications
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