本研究では,センサ表面の金属ナノドットアレイと接触対象の金属表面が構成するMIMメタマテリアル構造を応用して,センサ表面と金属表面の間に介在する潤滑膜厚を計測する.従来の光干渉型が膜厚を光路差として計測してきたのに対し,本研究で提案する手法は金属ナノドットアレイと接触対象となる金属の間で相互作用する表面プラズモンの共振効果を利用する.したがって,接触対象としては金属に限られるものの,光路差として計測するには難しかった小さな膜厚ほど,本研究で提案する手法ではより高い分解能で計測できる可能性がある.サブナノスケールの超薄膜領域ほど強みを持つという光学的な膜厚計測手法は従来にない本研究独自の着眼点である.サブナノスケールの潤滑膜を制御した状態での摩擦時の挙動は未だ明らかにされておらず,本研究で提案する潤滑膜厚センサはトライボロジーにおける新たな計測手法を与えるものと期待される. 本年度は当初の計画通り,電子線描画装置等を用いて形成した金属ナノドットアレイをSiO2膜内へ封止するプロセスを試みた.金属ナノドットアレイに対してSpin-on-Glass材を塗布・焼成し,希フッ酸エッチングを行うことで所望の厚さのSiO2膜内に金属ナノドットアレイを封止できることを確認した.次に,作製したサンプルの力―変位―光学特性を計測した.MIMメタマテリアルの特性が変位に応じて変化することを確認し,潤滑膜厚センサとして利用可能であることを示した.また,封止する材料としてPDMSを用いることで力に対して厚さが可変となる構造を作製し,力センサとしての応用可能性を示した.
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