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2022 年度 実施状況報告書

有機-無機材料界面での協奏的反応による原子スケール表面構造制御技術の新提案

研究課題

研究課題/領域番号 20K22482
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

加藤 邦彦  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70882299)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2024-03-31
キーワード遷移金属酸化物 / 酸化タングステン / ナノカーボン / マイクロ波 / 表面界面 / 光触媒
研究実績の概要

2.45 GHzマイクロ波電場印加により金属酸化物-有機高分子表面界面で誘起する協奏反応において、反応速度に影響を及ぼす可能性の高い因子(反応温度、原料混合比)を変化させ、合成物質構造へ与える効果を調査した。、また、Tiと異なる電気陰性度を有する遷移金属種の酸化物である酸化タングステン (WO3) 及び酸化モリブデン (MoO3) を原料粉体として選定した。本合成では、高いマイクロ波選択加熱性を得るため、炭素源として比較的高い誘電正接を持つポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いている。PMMAを酸化物に混合することでマイクロ波印加により速やかに温度上昇が見られ、400℃以上では高分子熱分解が激しく進むことでガス発生が顕著となり、青緑色プラズマ発光が観察された。以上から、CO2及び揮発性炭化水素系化合物を含む分子生成が示唆された。(合成実験はAr雰囲気で実施。Arプラズマ発光色は赤紫。)
TiO2系と同様、バルク結晶構造に変化を与えることなくカーボンとの複合化に成功した。また、PMMA混合比を増加させることでカーボンの結晶性が変化した。さらに、PMMA混合比が高い条件下では、酸化物のバルク内欠陥に起因する強いESRシグナルが確認され、複合化後にキャパシタンス増加及び1桁オーダーのインピーダンス減少が見られることが電気化学測定により明らかとなった。メチルオレンジの光分解反応において、可視光照射下では不活性な酸化物種であっても、複合粒子は2桁以上高い光触媒反応速度を示した。また、酸化物:PMMA体積混合比が2:1となる場合に活性は極大となり、混合比がそれ以上高くなると活性が低下する傾向にあった。複合構造形成による電荷分離促進が活性向上に寄与する一方、過剰量の炭素源存在によるバルク内欠陥増加により再結合中心として働く点や、カーボンシェル厚増加により酸化物の光吸収が阻害される点が活性低下の要因の1つとなると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の核となる「マイクロ波反応場によるセラミックス-有機高分子界面で誘起される協奏的反応」であるが、申請書に記載した金属酸化物-有機高分子の混合粉末に直接マイクロ波を印加するだけでなく、雰囲気制御により発生するマイクロ波プラズマによっても同様に引き起こされる可能性があることが新たに判明した。研究目的を達成するためには重要な調査であると判断し実施したため、複合粒子の合成・解析に時間が割かれ計画に多少の遅れがあるものの、複合的な視点からとらえることができるため反応メカニズムのより良い理解につながると考える。

今後の研究の推進方策

マイクロ波により誘起されるセラミックス-有機高分子界面での反応系に共通して、有機高分子の高速熱分解、金属酸化物の表面改質、ナノカーボンシェル成長を経て複合構造が形成されることが想定される。協奏的反応における反応速度に大きく影響を与えると考えられる原料の性状、例えば、高分子(PMMA) の分子量や結晶性、金属酸化物粒子の化学結合性(イオン・共有結合性)やファセット結晶性を変化させることにより、生成するガス種及び最終的に得られる複合粒子の構造を比較調査する。具体的には、高分子の凍結粉砕による非晶質化、電気陰性度の異なる遷移金属を含む酸化物の選定、フッ素イオン存在下での水熱反応による合成酸化チタン粒子のファセット結晶制御(下記文献で報告した手法を基に作製:K. Kato et al., J. Ceram. Soc. Jpn. 129 (2021) 691.)等に取り組む。さらに、異なる条件下において有機高分子の熱分解に伴い生成する揮発性ガスを採取し、ガスクロマトグラフにより分析する。以上をもとに特異反応場においてセラミックス-有機高分子界面で生じる協奏的反応メカニズムについて明らかにするとともに、得られた材料プロセッシングの設計指針をもとに可視光・近赤外応答型光触媒の高機能化に取り組む。

次年度使用額が生じた理由

【次年度使用額が生じた理由】
研究進捗を踏まえて本年度の消耗品購入を抑え、次年度に回すことを考えたため。
【次年度使用額の使用計画】
実験消耗品の購入及び研究成果報告のための旅費等に使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] マイクロ波誘起表面・界面反応によるコアシェル型複合ナノ粒子合成2023

    • 著者名/発表者名
      加藤邦彦,辛韵子,白井孝
    • 学会等名
      第61回セラミックス基礎科学討論会,日本セラミックス協会基礎科学部会
  • [学会発表] マイクロ波プラズマアシスト反応によるホモ-ヘテロ接合形成と可視光応答型光触媒への応用2023

    • 著者名/発表者名
      加藤邦彦,松井亮介,辛韵子,白井孝
    • 学会等名
      2023 年年会,公益社団法人日本セラミックス協会
  • [学会発表] マイクロ波プラズマによる可視光応答型ヘテロ接合光触媒の創製2023

    • 著者名/発表者名
      加藤 邦彦,辛 韵子,白井 孝
    • 学会等名
      2023 年度春期研究発表会, 一般社団法人粉体工学会
  • [学会発表] 金属酸化物-高分子表面/界面でのマイクロ波アシスト反応を利用した多層構造ナノ粒子合成2022

    • 著者名/発表者名
      加藤邦彦,辛韵子,白井孝
    • 学会等名
      2022年度 学術研究発表会,日本セラミックス協会東海支部

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公開日: 2023-12-25  

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