研究課題/領域番号 |
20K22483
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 昌宏 京都大学, 工学研究科, 助教 (20880636)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | フォトニック結晶レーザ / フォトニック結晶 / 半導体レーザ |
研究実績の概要 |
本研究では,フォトニック結晶の2次元共振作用をレーザ発振に利用した半導体レーザ(フォトニック結晶レーザ)において,180度および90度回折効果の相互作用を利用することによる大面積単一モード発振の実現を目指すものである.本年度は,まず,フォトニック結晶の格子点構造の設計のために,フォトニック結晶中の光の回折効果と形成される共振モードの特性との関係について,結合波理論に基づき理論検討を行った.そして,得られた設計指針をもとに,数値解析を行い,具体的な格子点構造の設計に取り組んだ.設計に用いた二重格子構造において,空孔径や空孔間距離といった回折効果を制御するうえで重要となる構造パラメータを見出し,それらを適切に調整することで,180度回折と90度回折に消失性干渉を生じさせる構造の設計に成功した.続いて,設計したフォトニック結晶構造の試作および評価にも取り組んだ.電子線描画やエッチング等の半導体プロセス条件の検討を行い,格子点形状を精密に制御したフォトニック結晶構造を導入したレーザデバイスを作製した.さらに,デバイスの発光スペクトル測定から回折効果の実験的な定量評価を可能とする新たな評価手法についても構築し,試作デバイスの評価を開始した.今後,試作デバイスの評価を進め,理論解析との比較を行いながら,設計および作製プロセスへとフィードバックすることによって,フォトニック結晶構造やデバイス構造の最適化を進めていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の通り,本年度は,大面積単一モード発振の実現に向けたフォトニック結晶構造の設計を行うとともに,デバイスの試作・評価についても開始した.まず,設計については,結合波理論に基づく検討により,大面積発振の実現に適した回折効果の条件について,理論的に明らかにすることに成功した.そして,そのような条件を実際に実現するための具体的な格子点構造についても初期設計を完了した.さらに,設計に基づき,フォトニック結晶レーザデバイスの試作を行うとともに,その評価のための測定系を構築するなど,実験的な検討も開始した.特に,本年度構築したフォトニック結晶内の回折効果を実験的に推定する手法は,今後,作製デバイスを分析し,格子点構造等の最適化を進めていくうえで重要な役割を果たすと考えられる.以上の研究の進捗は,当初の研究実施計画に沿ったものであり,本研究課題は順調に進行しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,まず,本年度試作したレーザデバイスのより詳細な評価を行う.180度と90度回折の消失性干渉度合いの評価に加えて,電流-光出力特性,近視野像,遠視野像といったレーザ特性の評価も行い,それらの関連付けを行う.そして,その結果を理論解析と比較・分析し,設計および作製プロセスへとフィードバックすることで,格子点構造の最適化を進める.また,このようなフォトニック結晶共振器自体に関する検討に加えて,大面積デバイスへの均一な電流注入による励起を実現するための,デバイス構造の検討も重要であると考えられる.そこで,半導体シミュレーションソフト等を用いたデバイスの電気特性の解析を行いながら,適切な電流注入分布を実現するための電極構造の設計および作製も行う.以上の検討により,最終的に,大面積フォトニック結晶レーザの単一モード発振の実現を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
作製したフォトニック結晶構造の抽出・分析のために,外注による試料分析を実施する予定であったが,研究を推進する過程で,別途,外注を行うことなく,光学測定による詳細な分析を可能とする手法が見出された.そこで,今年度に外注分析およびそれに関わる物品購入のために予定していた費用の一部を,今後そのような光学実験系をさらに充実させるための光学部品等の購入費用として,次年度に繰り越して使用することとした.また,コロナ感染症の影響により,学会等がオンライン実施となったことで,旅費として予定していた使用額との差が生じた.それらについては,今後,半導体プロセス器具の購入等にあて,適切な実験に効率良く助成金を使用することを意図して繰り越した.
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