本研究では,フォトニック結晶の2次元共振作用をレーザ発振に利用した半導体レーザ(フォトニック結晶レーザ)において,180度および90度回折効果の相互作用を利用することによる大面積単一モード発振の実現を目的としている。 本年度は、大面積単一モード発振を可能とするために重要となる180度回折と90度回折の打ち消し合いを生じさせるために、二重格子フォトニック結晶における空孔径や空孔間距離などの構造パラメータを調整して設計・試作を行ったレーザデバイスについて、発光スペクトル測定に基づく回折効果の実験的評価を行った。そして、実際に作製した構造における消失性干渉の度合いを定量的に評価し、理論解析との比較を行いながら試作を重ねることで、大面積単一モード発振が期待できる構造を実現するための設計パラメータ及び作製プロセス条件を見出すことに成功した。 また、上述のフォトニック結晶構造に関する検討と並行して、大面積デバイスを駆動する上で重要となる、面内の電流注入分布についても、有限要素法を用いた数値解析によって検討した。デバイスの各層のドーピング密度・組成・厚さと、ビーム出射側(基板側)の窓電極の開口径などを調整することで、大面積デバイスの全面に適切な電流注入を行うことが可能な設計を行った。 以上の検討を踏まえ、直径1mmの共振領域を導入したフォトニック結晶レーザを作製し、特性評価を行った。その結果、直径1mmサイズでの単一モード発振の実現に成功し、さらに、光出力としても10Wを超える高出力が得られた。以上のように、本研究の目標としていたミリメートル級の大面積における単一モード発振の実証に成功した。
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