研究課題/領域番号 |
20K22490
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 結奈 東北大学, 工学研究科, 助教 (80881953)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 生体電気化学 / 生体医工学 / 研究皮膚科学 |
研究実績の概要 |
生体の最前線に位置する皮膚は,体外情報をセンシングし,体内恒常性を維持する重要なインタフェースである.皮膚の表面は表皮細胞が作り出す角層に覆われ,体内水分の喪失,外的異物の侵入を防ぐ「バリア機能」が備わる.さらに近年,表皮組織が刺激伝達に関与する可能性が示されるなど,その機能性を明らかにする研究が進展をみせている.表皮組織内部には「表皮電位」とよばれる電位差が生じており,バリアなど表皮機能の指標として応用できると期待される.申請者は,表皮電位を低侵襲に計測するための微小針システムを開発し,皮膚機能評価などへの応用を進めてきた. 当該年度は,申請者が開発してきた計測用デバイスのさらなる高機能化を実施した.まず,表皮組織内部への電気的アクセスを極低侵襲化するため,医療・美容分野への応用研究が進むマイクロニードルを導入した.従来のシステムでは細い医療用注射針をベースとしていたが,マイクロニードルは針自体がさらに小さく,ポリマー材料で構成され,皮膚への負担を低減することができる.また,薄くフレキシブルな印刷電極を作製し,従来はハンドヘルド・プローブ型であったデバイスを,ウェアラブルなパッチの形にまで小型化した.予備的な結果ながら,数時間にわたる表皮電位計測に成功しており,皮膚機能の長時間モニタリングへの応用が見込まれる.皮膚ヘルスケアを日常生活に取り入れるための重要な研究ツールの開発につながる実績であると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度中に,申請者が開発した表皮電位測定用のプローブ型デバイスを大きく改良してパッチ型デバイスを作製し,極低侵襲化・ウェアラブル化をともに実現した.皮膚は最も身近な生体組織の一つであり,刻々と変化する環境に応じて様態を変えていく.よって皮膚ヘルスケア関連研究には,こうした変化を追跡するための小型デバイスが有用であると考えられる.皮膚に貼って使用するパッチ型デバイスは,日常生活に取り入れても負担が小さく,長時間のモニタリングに適した形状であると考えられ,今後の研究の基礎となる重要なツールである.本研究の目的である皮膚の電気的診断・治療に向けて,研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に開発したパッチ型デバイスを応用し,皮膚の刺激応答の長時間モニタリングなどを実施し,皮膚の電気的評価を行う.計測は主に動物皮膚サンプルを用いて行ってきたが,ヒトを対象とする計測や,動物モデルなどの導入を検討し,治療効果や安全性の詳細な評価を進める.
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