研究課題/領域番号 |
20K22498
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
赤坂 太 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00883224)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 脳動脈瘤 / MRI / 超高磁場 / 拍動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は脳動脈瘤およびその拍動をより詳細に描出し、定量的に評価可能な手法を開発するための基礎を確立することにあり、現在までに拍動ファントムの作成、GRASP再構成プログラムの改良、7T MRIで拍動ファントムの撮像までが完了した。 拍動ファントムは光造形型3Dプリンターで作成し、当院保有の拍動ポンプおよびアクリルケースと接続可能とした。形状は逆 U 字型の円筒構造とし、U 字の底部に動脈瘤に相当する4つの穴を開けた。伸縮性が非常に高い特注のゴムチューブでこれらの穴を覆い、内腔に拍動流が流れる際にゴムチューブ部分が外に膨隆することで動脈瘤の拍動を模擬する構造とした。3Dプリンターによる高精度の印刷、特殊なゴムチューブによる高い伸縮性と耐久性により、ポンプの出力を調整することで、疑似動脈瘤は安定して長時間にわたり、任意の脈拍数で、最大で2mmほど拍動させることが可能となった。 次に動脈瘤の拍動をシネ画像(動画)として描出するためには、GRASP法による再構成時に、ポンプの拍動を撮像データと同期させる必要がある。使用したポンプには疑似心電図信号を出力する機能が備わっていたため、同軸ケーブルを用いてポンプの出力端子とMRI装置付属の心電図検出装置とを接続し、撮像データと同じタイムスタンプでポンプの拍動を記録することができた。 次に拍動中のファントムを7T MRIでradial-VIBEシーケンスを用いて撮像した。その際に信号雑音比および拍動流の描出に必要なin-flow効果を最大化するため、各種撮像パラメータおよび撮像範囲を入念に調整した。改良したGRASPプログラムを用いた画像再構成および解析は次に実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定よりも進捗が遅れている理由には、COVID-19による7T MRI使用制限があった、安定して拍動するファントムの設計が予想より困難であった、3Dプリントが安定しなかった、アクリルケースが7T MRIのボア内に収まらないため成形が必要であった、撮像データとポンプの拍動タイミングの同期が困難であった、などが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
Radial-VIBEで撮像したデータを改良したプログラムで再構成する。目標とする血管拍動画像が生成され ることを確認し、撮像および再構成パラメータを最適化する。一般に時間的・空間的解像度を上げるとコントラストノイズ比が低下するため、小さな動脈瘤が明瞭に描出されるよう、最適なパラメータを模索する。また動脈瘤のサイズ・形状、拍動の大きさ(壁運動の距離、容積変化)および持続時間を生成画像から定量値で算出する方法を開発し、実測値との比較によりどの程度まで正確に描出可能であるかを検証する。 GRASPはradial-VIBEシーケンスをベースとしているためT1強調画像であり、一般にMRAに用いられるTime-of-flight (TOF) 法と同様に、血流のin-flow効果により動脈が高信号に描出される。 TOF-MRIでは動脈と背景組織のコントラストを強調するために、TONEパルスによる励起で血流信号を抹消まで維持し、磁化移動(MT)パルスの付加により背景信号を抑制するなどの工夫がなされている。TOF-MRAと同様の血管画像とするためGRASP法に同様の改変を実装する。 以上で改良されたGRASPを用いて、実際の脳動脈瘤患者を撮像する。描出された脳動脈瘤の形態および拍動を上記の手法で定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はCovid-19のため出張ができず、旅費が発生しなかった。次年度は状況が許せば国際・国内学会参加、研究協力者との交流を実施したい。
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