本研究の目的は,心不全リスクの定量評価に関する新指標の提案に向けて,補助人工心臓用の血液ポンプ駆動情報から,大動脈に関する生体情報(血管コンプライアンス:AC,大動脈流量および大動脈圧)を簡便に評価できる手法(以下,本検査手法)を開発することである. 本検査手法の原理である[ポンプ駆動情報]-[ポンプ特性]-[AC]の相関には,ポンプ羽根車が血流から受ける力(流体力)が影響する可能性がある.羽根車に働く流体力はポンプの流路形状によって決まるため,本検査手法を従来の血液ポンプに適用する(手法標準化)にあたって,ポンプ流路形状と本検査手法の関係を調べることは重要となる. 今年度は,上記相関の中で特に,ポンプ流量-羽根車位置相関(Q-r相関)の調整に向けたポンプ流路設計指針を得るために,ポンプ流路設計とポンプ内流れ場の関係をコンピュータによる数値計算によって調べた.Q-r相関を規定する羽根車に働く径流体力に関係するポンプ流路設計因子として,径間隙に着目し,径間隙とポンプ揚程,羽根車に働く径流体力,及びポンプ内圧力分布の関係を数値計算によって解析した.その結果,径間隙の設計変更によって,インペラ径変位やポンプ流量に対するインペラに働く径流体力の大きさや向きを変化させ,Q-r相関を変化させられる可能性があることを示した. 本研究では,数値計算によってポンプ流路設計とポンプ内流れ場の関係を調べ,本検査法構築に至適な流路設計について検討した.計画にある通り,血液粘度変化,羽根車の羽根形状,径間隙,渦巻き室形状に着目し,それら設計因子の変化が,ポンプHQ性能,ポンプ制御性能,血液適合性に及ぼす影響を予測した.その成果として,本検査法を血液ポンプに適用するために有用なポンプ設計指針が得られた.
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