本研究は、診療放射線技師養成機関でのX線撮影教育におけるVR環境の適正性を、X線撮影装置実機使用実習(以下、実習)による学習効果と比較することで、物理的、経済的制限により設備が十分ではない養成機関の学生にVirtual Reality(VR)環境下による実習機会を創出する可能性、つまり新たな教育手段の創出可能性を検討するものである。 2020年度から2023年度全体を通し、胸部立位X線撮影を題材としたVRコンテンツの開発を行い、そのコンテンツが使用可能であるかの評価、胸部立位X線撮影に必要な手技と接遇の学習が可能であるか、また実習にVRを用いた際に考えられる学生の負担について調査した。被験者となる学生の授業カリキュラムの都合上、長期スパンでVR環境のみで学習をする被験者の確保が現実的に難しい状況にあり、実空間での学習との比較については評価指標を一定にした状態で実空間とVR空間の環境別に比較することとした。 2023年度は2022年度に開発したVRコンテンツに関して以下を行った。①実空間で熟練技師のX線撮影中の医療安全配慮時の視線をを確認したところ医療事故頻発場面に一致した。②実空間における学生の視線を取得し熟練技師の視線との違いを確認し視線で評価できる可能性が示唆された。③①の結果をもとに、医療事故防止のための学習を行うコンテンツを作成しそれらの学習効果を検証したところ医療安全に関して認知できる可能性が明らかとなった。④コンテンツに用いたロールプレイシナリオおよび評価指標の臨床的妥当性を示し論文発表した。⑤コンテンツ使用に際し、VRによる学生の疲労感を唾液アミラーゼとフリッカーテストにより生理的評価を行ったところある程度のストレスはあるものの視覚的な疲労ははっきりしなかった。①②③⑤はいずれも国内学会にて発表した。
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