人間の汗には体内で分泌される重要な代謝産物や電解質が含まれている。それらの代謝産物がリアルタイム定量化できれば、代謝性疾患や生理的状態などのモニタリングが可能となる。本研究では従来の味覚センサに使用された脂質高分子膜を、安価・柔軟・軽量で大量印刷可能なスクリーン印刷電極に修飾することで、代謝産物(塩化ナトリウム、乳酸、グルコース)と脂質高分子膜の相互作用を電気的に検出する汗センサの開発を目的とした。本年度は、昨年度に試作したスクリーン印刷電極センサの評価を行った。試作した電極はPETフィルム上にカーボンペーストをスクリーン印刷した電極を用い、導電性高分子(PEDPT:PSS)と異なる脂質高分子膜溶液(脂質、可塑剤、PVC)を積層し、スクリーン印刷式脂質膜センサを構成した。塩化ナトリウム、乳酸に対して、従来の塩味センサ、酸味センサの膜で応答し同様の選択性を有することや従来の洗浄工程がなくてもリアルタイム計測できることが分かった。一方、グルコースサンプル測定に対しては、甘味センサの応答原理の解明に伴い測定後の脂質高分子膜表面の初期化に関して課題が見つかった。また、塩化ナトリウムと乳酸用の膜は汗中に存在する濃度範囲(塩化ナトリウム : 10~100mM;乳酸:1~100mM)に十分に対応できたが、グルコース(0.01~1mM)用のセンサ膜の場合、応答感度の観点から実現には至らなかった。今後は、導電性高分子の修飾方法と脂質高分子膜の設計方針を調整することで改善を試みる予定である。
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