心臓は規則正しく拍動し、全身に血液を送り出すポンプの役割を担う臓器である。この心臓の規則正しい拍動は洞結節に存在するペースメーカ細胞によって生み出される。ペースメーカ細胞が生み出す電気信号(自発性活動電位/自動能)が刺激伝導系を通って下流の作業心筋細胞に伝わり協調した心臓拍動を生み出す。このように、心臓拍動の要となるペースメーカ細胞であるが、ヒト心臓から生きたまま直接採取することは不可能であるため、解析は進んでいない。そこで本研究では、ヒトiPS細胞から分化誘導したペースメーカ細胞と、生体材料を用いて洞結節の三次元組織を再現し、ヒト心臓の拍動制御機構を解明することを目標としている。 この実現へ向けて、1年半の研究期間で、1) ヒトiPS細胞由来ペースメーカ細胞の分取法の構築と、2) 組織化へ向けた培養方法の開発に取り組んできた。1) に対しては、2種類のペースメーカ細胞の遺伝子マーカーを利用し、ペースメーカ細胞の純化法の改良をおこなった。結果、既存法よりペースメーカ細胞を濃縮することに成功している。加えて、既存の心筋分化誘導法を改良し、分化効率を改善した。2) に対しては、純化後のペースメーカ細胞の培養方法について、自律拍動を長期に持続できる培養方法の検証を行った。さらに、現在、アガロースカプセルを用いた三元組織化を進めている。研究活動スタート支援によって、ヒトiPS細胞培養および心筋分化誘導の実験系の立ち上げを完了することができ、加えて、組織化への取り組みを開始することができる状況に至っている。
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