研究実績の概要 |
前年度は反応条件の確立および新規触媒骨格の構築に焦点を当て検討を行ったため、最終年度は引きつづきその検討を行った。まずは触媒ライブラリを拡張するにあたり、新規触媒骨格の合成経路を確立した。ここで開発した合成手法を用いることで、一連の極めて酸性度の高いブレンステッド酸触媒を合成することに成功した。また、ここで開発した合成法はこれらキラル触媒だけでなく、関連するアキラルなブレンステッド酸の合成にも適用することが出来る一般的な手法だと考えられる。しかしながら、これらを用いた種々の条件検討にもかかわらず、最初に設計した反応では高い選択性を得ることは出来なかった。 そこで、本年度は水素移動反応を分子間から分子内反応にすることで、より反応障壁を下げ、また同時にエナンチオ選択性をあげることが出来ると考えた。すなわち、これまでのIDPi触媒を用いた検討で副生成物として得られた、アルケンの異性化体に焦点を絞って研究することとした。設計通りの基質を用いた場合にはその生成物はキラルではないため、メソ体のアルケンを基質としてキラルブレンステッド酸により異性化させることにより、非対称化反応が可能になると考えた。種々の検討の結果、IDPi触媒を用いて目的の化合物が高い収率で、かつer=65:35程度と中程度ながらエナンチオ選択的に得られることを見出した。ここで、最適な触媒を設計するにあたり計算化学的知見が役に立つと考え、申請者は関連する反応についてGRRMを用いて解析を行った。その結果、これまで分かっていた3,3'-置換基のみならず、窒素置換基に関しても選択性を制御する鍵となる役割をし得ることを見出した。今後、これらの知見をもとに更なる条件検討を重ねることにより、満足のいく選択性を得られると考えている。
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