研究実績の概要 |
分子の配列や集合形態、そして、さらに集合体同士の集積構造まで精密に制御することができれば、分子に秘められた機能を最大限引き出した物質創製が可能となる。本研究では、異種金属錯体の単結晶同士がヘテロ接合したブロック超分子結晶の創製とその機能開拓を行う。具体的には、(1)結晶のサイズ・モルフォロジーの精密制御、(2)異種結晶の接合されたブロック超分子結晶の創製と(3)その機能の開拓を目的とする。具体的には、4-カルボキシ-2,6-ジピラゾリルピリジンを配位子とする鉄(II)、コバルト(II)、亜鉛(II)錯体の合成および単結晶化、ならびに、それらを用いたブロック超分子結晶の作製に取り組んだ。鉄(II)錯体の単結晶を種結晶としてコバルト(II)もしくは亜鉛(II)錯体を種結晶表面から結晶化させることで、鉄(II)錯体の結晶をコア、他方の錯体結晶をシェルとするコアシェル型ブロック超分子結晶の作製に成功した。非常に興味深いことに、鉄(II)錯体の結晶をコア、コバルト(II)錯体をシェルとするブロック超分子結晶のX線結晶構造解析の結果、シェルを形成するコバルト(II)錯体の結晶構造はコアの鉄(II)錯体と同様の集合構造を形成しており、コバルト(II)錯体単体から得られた結晶構造とは異なることが明らかになった。これは、ブロック超分子結晶の形成過程が、種結晶からのエピタキシャル成長に基づくことを示唆する結果である。また、コアシェル型ブロック超分子結晶のスピンクロスオーバー挙動についてMPMSを用いて検討した。その結果、コアシェル型ブロック超分子結晶の鉄(II)錯体コアにおいて、鉄(II)錯体のみからなる単結晶よりも低い温度でスピン転移が発現すると明らかになった。これらの結果は、異種金属錯体結晶のヘテロ接合による単成分系とは異なる構造体形成・物性発現を示唆している。
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