研究課題
ペロブスカイト太陽電池の高性能化には、光吸収により生成する電荷を効率的に回収する半導体材料の開発が重要である。最近では、正孔回収材料を単分子膜として用いることで優れた光電変換効率と安定性を示すペロブスカイト太陽電池が報告されている。従来の単分子膜材料では、金属酸化物基板への吸着能を有するアンカーは一つであり、π 平面が基板に対して垂直配向をとっていると考えられる。しかし、ペロブスカイト層と単分子膜材料の軌道の重なりの観点からは、水平配向の方が電荷の取り出しに有利であり、より高性能なペロブスカイト太陽電池が作製できると期待される。本研究では、π 骨格に複数のアンカーを導入することで水平配向の実現を目的にした。π 骨格としてトリアザトリキセン骨格に着目し、アンカーとしてホスホン酸基を三つ導入したトリポッド型分子(3PATAT-C3)を設計・合成した。3PATAT-C3のDMF溶液を金属酸化物上にスピンコートし、分子の吸着様式や分子配向を調べた。その分子の粉末と金属酸化物に吸着した膜に対して、赤外線反射吸収分光測定を行ったところ、吸着膜ではP-O-H伸縮振動に対応するピークが大きく減少し、ほぼ全てのアンカー基が金属酸化物表面に化学吸着していることがわかった。また、紫外光電子分光法と、準安定原子電子分光法によって得られたスペクトルの比較から、分子が水平配向で吸着していることが明らかになった。この単分子膜を用いた鉛系ペロブスカイト太陽電池が優れた耐久性とともに最高で23.0%の効率を示すことがわかった。また、トリポッド型3PATAT-C3の単分子膜を用いてスズ-鉛混合型ペロブスカイト太陽電池への応用も検討した。作製したデバイスが21%程度、従来の導電性ポリマー(PEDOT:PSS)やバルク材料のPTAAより比較的高い光電変換効率を示すことがわかった。
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