研究課題
本研究課題では、13族元素を構成元素とするホモカテネート高分子(HCP)の合成手法の確立を志向し、遷移金属触媒を用いた13族元素HCPの重合反応開発に取り組んだ。ホモカテネート構造とは単一元素が共有結合で連結した構造を指し、13~16族元素で形成可能とされる。13族は唯一HCPの報告がなく、高分子科学における未踏領域である。そこで本研究では、遷移金属触媒を用いた13族元素HCPの重合反応開発に取り組みこれらの物性開拓に挑戦した。非炭素HCPの特徴にσ結合を介した電子の非局在化がある。13族元素HCPは既存のHCPと相反する電子受容性を持つと予想され、この分野に重要な物質群であるといえる。さらに、HCPと側鎖に導入した有機π共役系との相互作用によって生じる新たな電子状態を有機ー無機ハイブリッド電子系と捉え、この電子系を機軸とする新たな学問分野の構築を目指した。具体的には、モノマーとなる種々の4配位アルミニウムヒドリド錯体を合成し、それらとロジウムやジルコニウムなどの遷移金属錯体との当量反応を検討した。その結果、一部のヒドリド錯体において、重合の開始反応に相当する、遷移金属のアルミニウム-水素結合への挿入が確認された。その後、成長反応に対応する脱水素反応を試みた。反応温度および光照射などの検討を行ったが反応の進行は確認されなかった。これは、アルミニウムから遷移金属への電子供与が弱いことが原因と推察された。今後、遷移金属およびアルミニウム上の配位子の構造を変化させることで成長反応の進行を実現する予定である。一方、本研究にて得られたアルミニウム錯体において、当初想定しなかった次のような興味深い発光特性が観測された。錯体の低温状態におけるリン光発光効率が配位子の立体的環境によって変化した。これらの錯体は重元素を含まないため、有機EL素子の高効率化に資する新たな材料になり得ると言える。
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