環境低負荷な合成プロセスとして、電気の力を駆動力とする有機電解合成法を用いたインドール化合物の骨格変換に取り組んだ。インドール化合物は電子豊富な有機化合物であることから、その2位と3位が酸化条件において酸化されうるということがわかっていた。このようなインドール化合物の酸化的な骨格変換は、インドールアルカロイドをはじめとした天然有機化合物の生合成過程にも広く活用されている。 今回、有機電解法を用いたインドール化合物の酸化的な骨格変換法として、臭化物イオンをハロゲンメディエーターとして利用する間接電解法を採用した。有機化合物の直接的な陽極酸化とは異なり、陽極酸化されやすいハロゲンメディエーターを用いることで、温和な反応条件下での骨格変換が可能となる。また、一般的にインドール環をはじめとしたヘテロ芳香族化合物はハロニウムイオンと相互作用しやすいため、本合成プロセスにおいてもハロゲンメディエーターの活用が効果的であると考えた。 具体的には、インドールの2位と3位に環状アルキル置換基を縮環させた化合物群の陽極酸化に取り組んだ。その結果、アルキル基上に窒素原子を有するような環状化合物を用いた際には、セミピナコール型の転位反応が進行するのに対して、炭素環を縮環させた際には炭素環の酸化が進行することが明らかとなった。セミピナコール型の転位反応は、2つの窒素原子上の保護基を適切に選択することが重要であったほか、一部の出発原料については立体障害のため反応性が低下することがわかった。また、炭素環の酸化反応においては、インドール環上の置換基による芳香環の電子状態が反応進行に影響を与えることがわかった。
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