星間分子雲に最も豊富に存在する水素分子の赤外観測情報は、周囲環境の過去の情報を含んでおり 、分子雲の年齢や星形成メカニズムの解明のための鍵となることが知られている。しかし、赤外天文観測の結果がどれほど過去のものを反映しているのかといった定量的側面に関して情報を得ることは難しく考察はほとんど進んでいないのが現状である。そこで、宇宙空間を再現した実験室系において近い環境を再現し、実験的に明らかにすることができると考えた。真空装置内に星間分子雲環境を再現し、モデル鉱物表面上に吸着させた水素分子に対して量子状態・量子ダイナミクスを を解明することを最終目標とした。 研究室所有のTi:サファイアレーザー (800 nm)を用いて、非線形ラマン分光測定を行うための光学系の立ち上げを完了した。スーパーコンティニューム白色光を用いたマルチプレックス方式、及び35fsのフェムト秒超短パルスレーザーを用いたインパルシブ励起方式の両方式を実施可能とした。星間分子雲環境のモデル系となる温度、圧力条件を再現した装置内で、星間塵を模した氷の薄膜、及び水素ガス分子を含む等核二原子分子についてin-situ条件での非線形ラマンスペクトルの測定に成功した。現在、これらの成果を国際誌に投稿する論文としてまとめているとともに、吸着水素分子の量子状態・量子ダイナミクスの更なる解明に向けて研究活動を継続している。
|