研究実績の概要 |
林産資源から単離されるセルロースナノファイバー(CNF)は、低炭素循環型社会の実現を担うキーマテリアルとして期待を集めている。しかしCNFの化学構造に由来する機能が未開拓であることから、本研究ではCNFを用いた触媒反応の創製に取り組んだ。 我々がこれまでに見出しているCNFと天然アミノ酸のプロリンとの協奏触媒によるアルドール反応(Sci. Rep., 2018, 8:4098; Molecules, 2019, 24, 1231)において、CNFをヒドロゲルやエアロゲルなど種々の形態に加工し、反応効率や選択性への影響を検討した。ゲル化によりCNFの分散安定性が向上し、これまで度々問題となっていた反応の再現性の問題を改善することに成功した。 また、CNF界面を高密度にカルボキシ化したTO-CNFを用い、カルボキシ基にピペラジンをイオン結合によって担持して塩基性サイトを導入することで、酸塩基複合型触媒を開発した。本触媒では、CNFが剛直な結晶性繊維であるために酸と塩基の中和による失活が抑制され、同一系内で酸触媒と塩基触媒が同時に機能することが可能である。本触媒を用いて、酸触媒によるアセタールの加水分解と塩基触媒によるKnoevenagel縮合を同一系内で行う多段階連続反応に成功した。さらにCNFと同様の多糖高分子であるキトサンナノファイバーを塩基触媒に用い、TO-CNFと組み合わせることでも同様の酸塩基連続反応が可能となった。
|