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2020 年度 実施状況報告書

固体電気化学に基づく熱力学的な制約を超えた新規酸素欠損量制御法の創製

研究課題

研究課題/領域番号 20K22544
研究機関北海道大学

研究代表者

岩崎 秀  北海道大学, 電子科学研究所, 博士研究員 (30888136)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード固体電気化学法 / 酸素欠損量制御 / 熱電 / 超伝導
研究実績の概要

本研究では、固体電気化学に基づく新しいコンセプトにより、熱力学的な制約を超えた酸素欠損量制御技術を創製することを目的とする。このために、酸素原子が選択的に欠損し、その欠損量が電子・磁気状態を決定する複合アニオン層状化合物Sr2VFeAsO3-δをターゲットとする。酸素欠損量制御の基盤技術により、熱力学的準安定な新規酸化物群開拓の新たな戦術を提案するものである。
まず、複合アニオン層状化合物Sr2VFeAsO3-δの合成条件の再検討を行った。Sr2VFeAsO3-δは常圧下のアニールにより異相が析出しやすく、単相を得ることが非常に難しいが、MPaオーダーの圧力下アニールにより異相が減少することが知られている。そこで、まず異相が減少する圧力・温度領域を探索した。4 GPaの高圧アニールではSr2VO4をはじめとする異相が析出するのに対し、1 GPaの高圧アニールでは異相が減少することを明らかにした。また、1 GPaの高圧アニールにおいて、1050 ℃ではSr2VO4をはじめとする異相が析出するのに対し、900 ℃以下では異相が極めて少ない試料が得られることを明らかにした。これらの知見をもとに、固体電気化学法を高圧下で行った。高圧合成は閉鎖系での合成であることから、Asの揮発による外部への漏れを防ぐことができる。Sr2VFeAsO3-δは酸素欠損量により超伝導特性が変化することから、得られた試料の低温における超伝導特性を評価した。得られた試料の超伝導転移温度は固体電気化学法前後で低下したことから酸素欠損量が減少したことを示す。
さらに、酸素欠損量制御だけでなく、1 GPa, 550 ℃での固体電気化学法による酸素欠損サイトへのヒドリド(H-)の注入を試みた。550 ℃では異相が析出した。今後は最適な温度条件を探索したうえで、ヒドリドの有無の評価および超伝導特性を調査する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、Sr2VFeAsO3-δの異相を減少させる高圧アニール条件を明らかにした。また、この知見をもとに、高圧下での固体電気化学法を行うことで、異相の析出が抑制された試料を得た。このように、本来、常圧下で異相が析出しやすいSr2VFeAsO3-δにおいて、高圧条件であれば異相の析出を抑制したまま固体電気化学法が有効であることを明らかにした。この知見は、Sr2VFeAsO3-δの酸素欠損を能動的に制御するための基盤となるものである。以上の研究成果を踏まえ、概ね順調に進捗していると判断した。

今後の研究の推進方策

高圧下での固体電気化学法をSr2VFeAsO3-δに適用し、電圧・圧力・温度条件が酸素欠損量に及ぼす影響を明らかにする。また、熱処理のみでは不可能な、熱力学的制約を超えた酸素欠損量を可能にする合成条件を明らかにする。得られた試料に対して、超伝導特性および熱電特性を評価する。
また、酸素欠損導入の応用として、酸素欠損サイトを利用したヒドリド(H-)の固体電気化学的注入を行う。今後は最適な温度条件を探索したうえで、ヒドリドの有無の評価および超伝導特性を調査する。

次年度使用額が生じた理由

当初、MPaオーダーでの圧力アニールを行うホットプレス装置を購入予定であったが、すでに研究室に設置されているGPaオーダー用の高圧装置で代用可能であったため、ホットプレス装置購入用の資金を使用しなかった。
次年度の使用計画として、試薬および熱処理装置の購入を検討している。

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公開日: 2024-12-25  

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