平衡反応系の計測では、新規セルを用いて一粒子トラップに成功した一方で、流れ場の影響を抑えることが出来ず、反応速度計測が難航した。中空ナノ粒子を用いた微量計測では、中空ナノ粒子の作製が困難であったため、中空マイクロ粒子を用いた方法へ変更した。中空粒子が超音波定在波の腹に集まることを確認し、シラノールを用いた表面修飾を行った。中空マイクロ粒子にはアビジンを、金ナノ粒子にはビオチンを修飾し、アビジン―ビオチン反応により、中空マイクロ粒子の密度および圧縮率の変化を誘起した。微量の金ナノ粒子の結合で浮揚位置が腹から節へ変化する中空マイクロ粒子を見出した。結果として、金ナノ粒子の結合に伴う中空マイクロ粒子の浮揚位置の変化を観測出来た。したがって、コンセプトは達成できており、後は細かい条件検討を行って原理を詰めていく予定である。 結合破断を利用した反応計測では、大きく進捗した。2020年度の段階で、微量計測のコンセプトを達成したが、2021年度は粒子が解離する電圧と粒子密度の関係式を明らかにした。この式をもとに微量計測法として確立し、特許と論文にて成果を発表した。また、さらに上記関係式の中で、解離電圧と粒子-ガラス基板間の平衡定数に相関があることを発見し、小さい平衡定数(10^2-10^9 M-1)の半定量法を確立させた。この手法に関しても特許を出願しており、論文を投稿中である。上記の平衡反応系の計測は上手くいかなかったが、結合破断を利用した計測法の方で平衡反応系の計測に成功した。また、さらなる展開として、ガラス基板とマイクロ粒子間の結合にサンドイッチハイブリダイゼーションを用いることで非修飾計測が可能であることを示しており、現在計測原理の実証中である。
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