研究課題/領域番号 |
20K22548
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
増田 晋也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (80885468)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 金クラスター触媒 / 固体触媒 / 配位子保護金クラスター / 酸化反応 |
研究実績の概要 |
当該年度は、サイズ・組成制御したチオラート保護金クラスターを種々の担体上に吸着させ、原子精度のサイズを保ったまま配位子を除去して金クラスターを担持することを試みた。担体検討の結果、特定の組成で合成した層状複水酸化物様の担体上では、配位子保護金クラスター単味の熱重量測定から算出した配位子の燃焼が始まる温度より低温での焼成において、ベンジルアルコールの酸化反応における触媒活性が発現することを見出した。12時間までは焼成時間の増加に伴い活性の増加が見られ、それより長い時間での焼成においても同等の活性が得られた。このことから12時間焼成によって配位子が完全に除去され、長時間の焼成下でも同等の活性点が保たれていることが示唆された。そこで本触媒のXAFS測定を行ったところ、12時間焼成後にはAu-S結合に由来するピークが見られなくなり、Au-Au結合に由来するピークから算出したAuクラスターの配位数は12-30時間の焼成において大きく変化しなかった。つまり活性と金クラスターの状態に相関性が見られ、配位子の除去によって活性が発現し、配位子除去後は本担体上で原子精度の精密性を保ったまま金クラスターが担持できていると考えられる。また、上述のチオラート保護金クラスターの他に、新疎水性の異なる2種類の配位子保護金クラスターを担持して焼成すると、疎水性の配位子を用いた際には12時間の焼成によって同等の活性が得られ、親水性の配位子を用いた際には20時間の焼成によって同等の活性が得られた。XAFS測定の結果、これらの条件において配位子の除去が確認されたため、親水性の配位子から成る配位子保護金クラスターの方が長い焼成時間を要するが、様々なクラスターに対して本担体が応用できることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的の一つとして、これまで困難であった配位子保護金クラスターの精密担持法の開発および触媒反応特性の評価を掲げている。当該年度において金クラスターに対して高い親和性を持つ担体の開発に成功した。本担体を用いることで原子精度の精密性を保ったまま金クラスターを担持することに成功し、触媒反応においても高い活性が得られている。これは本申請課題の全期間を通しての達成目標の一つであったため、当初の計画以上に研究が進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点で低温長時間焼成による金クラスターの精密担持に成功している。そのため、本手法が他の担体上においても適用可能かどうかを検討する。また、原子精度での担持には成功したため、種々の反応や反応条件において、この触媒が安定に利用できるかを検討する。さらに、現状はチオラート保護金クラスターのみを用いているため、他の配位子で保護された金クラスターの担持についても検討する。具体的には、ホスフィン保護の金クラスターの応用を試みたい。ホスフィン保護金クラスターは構成金原子数が少ないものが多いため、配位子除去後は不安定になる。また、多くの金原子がホスフィンと配位しているため、炭素担体などの上ではホスフィン金錯体として分解することが報告されている。そのため、金との親和性が高い担体を用いることで、金クラスターのサイズをある程度維持したまま、配位子が除去された金クラスターを担持することができると考えている。こうした触媒合成を通して、高い活性や新奇な反応特性の発見を目指す。
|