研究課題/領域番号 |
20K22549
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安原 颯 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (20880032)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | リチウムイオン二次電池 / 三相界面 / エピタキシャル薄膜 / 固体電解質界面 / サイクル特性 / 副反応抑制 |
研究実績の概要 |
本年度は、サイクル特性を劣化させる要因であるリチウムイオン二次電池の電極表面における副反応理解のため、まずBaTiO3マイクロパッドを堆積させたLiCoO2エピタキシャル薄膜を作製し、充放電を行った後の表面状態についてマイクロビームを用いるX線光電子分光(XPS)にて観察した。P2pやF1sのシグナルを観察した結果、充放電後の表面状態はマイクロパッドからの距離に応じて表面状態が大きく異なっていることがわかった。マイクロパッド近傍(三相界面領域)では、マイクロパッドから離れた領域と比較してLiPF6が多く検出された。この結果は、電解質として導入してあるLiPF6の分解反応が抑制されていることを示唆している。予備実験の結果では、三相界面領域では充放電サイクル中の副反応にて生成する固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜が形成されにくいことが既にわかっている。XPS測定結果と合わせて、三相界面近傍ではLiPF6の分解が抑制されてPF5-が生成されにくい状況が達成できていることが示唆される。このPF5-は電解質溶媒であるエチレンカーボネート(EC)を分解してしまうことが知られており、ECの分解物が電極表面に析出し、結果として有機物系のSEIが電極表面に堆積すると予想される。三相界面ではLiPF6の分解反応を抑制できるため、PF5-生成を起点としたSEI形成が生じ難く、結果としてSEIがほとんど堆積しない状況を達成できているのだと考えられる。この過程において、電解質を分解する副反応が抑制されるため、充放電のサイクル特性も向上させることができているのではないかと現在予想している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は当初の研究計画通り、充放電後の薄膜表面のXPS測定により三相界面での特異性を観察することで、サイクル特性向上に向けたキーファクターを解明することができた。そのため、当初計画した通り概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに実験を進めていく。充放電後の薄膜について、断面方向の走査型電子顕微鏡観察を行うことにより、深さ方向の議論を可能とする予定である。
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