前年度は、イオン交換法を用いてゼオライト中にRh種を導入する際、ゼオライト骨格中のAl原子位置に依存して、導入されるRh種の化学状態が変化するを見出した。また、メタンの酸化的改質反応に対する触媒活性も大きく異なっていたことから、本年度は、本反応系におけるゼオライト構造の役割と活性点構造の解明を目的とした。 まず、モデル触媒として、Rh含有量の異なるRh含有Yゼオライト(Rh-Y)と非晶質シリカアルミナ(Rh-ASA)を調製し、紫外可視および赤外分光、TEM、H2-TPR測定を用いて、Rh種のキャラクタリゼーションを行った。その結果、Rh-Yでは、孤立Rhカチオン種が形成されているのに対し、Rh-ASA中のRh種は、主に酸化物として存在していることが確認された。次に、モデル触媒のメタン改質反応活性を評価した。Rh含有量が多い触媒同士の比較において、Rh-ASA上のRh酸化物は、Rh-Y上の孤立Rhカチオンよりもわずかに高いメタン転化率およびCO収率を示した。一方、Rh-Yは、Rh-ASAよりも長寿命な触媒であることがわかった。これは、ゼオライト骨格と孤立Rhカチオン種との静電的相互作用によって、Rh種の凝集が抑制されたためである。したがって、本反応系に対して高活性な触媒活性種はRh酸化物種であり、ゼオライト骨格構造は、活性点凝集を防ぐ役割があることが示唆された。 以上の結果を踏まえ、MFI型構造の比較的広い空間で生成したRh酸化物クラスター種が本反応に高活性かつ長寿命であった要因は、広い空間にAl原子が位置することによるRh酸化物種の形成と、ゼオライト細孔構造による凝集の抑制に起因すると結論付けた。
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