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2020 年度 実施状況報告書

相対論的量子化学を用いたアクチノイド化合物の化学結合解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K22553
研究機関京都大学

研究代表者

砂賀 彩光  京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (60885416)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード相対論的量子化学 / 量子化学 / スピン軌道相互作用 / アクチノイド / 化学結合 / 理論化学 / 分子軌道ダイアグラム / walshダイアグラム
研究実績の概要

アクチノイド化合物は、アクチノイド原子の5f6d7s軌道が寄与する特異的な化学結合が発現することが知られている。しかし、Gaussianをはじめとする汎用プログラムでは、電子スピンと軌道間の相互作用であるスピン軌道(SO)相互作用を考慮できないため、SO分裂した軌道(5f_5/2軌道と5f_7/2軌道等)の寄与を求めることができない。当研究では、アクチノイド化合物の真の描像を捉えるため、1)SO効果を考慮でき、2)基底関数依存性が少ない、相対論的量子化学に基づく化学結合の解析手法を開発することを目的とする。
当研究で使用する射影解析法は、分子軌道を分子中の原子の原子軌道へ射影するため、原子軌道を計算する必要がある。当該年度では、以下の成果を得た
(i)原子軌道が部分的に占有されたアクチノイド原子(例えば、ウラン原子では5f^3 6d^1 7s^2)の計算を可能にするためのプログラムを作成した。具体的には、Fock行列を相対論的な枠組みで定義される量子数であるκ及び全角運動量量子数のz成分であるjz成分ごとにブロック対角化することで、(κ, jz)で指定される軌道の電子数を指定できるようにした。
(ii)化学結合の解析を行う際の計算コストを見積もるためのテスト計算を実施した。高次相対論項であるGaunt項を考慮しても計算コストが大幅に変わらない点、および目的とするアクチノイド化合物の計算が収束する点を確認した。これにより、次年度以降の化学結合の解析を行うための準備が整った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当研究の計算に必要なプログラムが完成し、また電子波動関数計算が収束することを確認したことで、次年度に化学結合の解析を行うための準備が整った。Gaunt項を考慮した4成分相対論法は、分子系を計算するための相対論法としては最高精度であるため、後の研究のベンチマークとなる計算を行うことが可能である。
また、当研究で開発したプログラムは、部分的に占有された電子配置の収束を改善するだけでなく、原子のSCF計算の高速化にも寄与する。SCFの段階のうち、Fock行列の対角化は一般に基底関数Nの3乗に比例する計算コストがかかるが、当研究で開発したプログラムを用いれば、(κ, jz)で指定した原子軌道のみに対してブロック対角化すれば良いため、事実上の基底関数のサイズを小さくし、SCF計算が高速化する。当研究で開発したプログラムは、2021年度に公開されるDIRACプログラムの最新バージョン(DIRAC21)で公開される予定である。

今後の研究の推進方策

開発したプログラムを用いて、アクチノイド化合物の射影解析を実施する。計算対象は、2価のUO2カチオン及びUN2を予定している。UO2カチオン及びUN2のX-U-X角度を変えた計算を行うことで、アクチノイド化合物に関するwalshダイアグラムを作成する。特に、core-valence軌道であるUの6p軌道は、SO効果で大きく分裂することが予想されるので、Uの6s, 6p_1/2, 6p_3/2軌道およびXのnsnp軌道(例えば、酸素なら2s2p軌道)に関するwalshダイアグラムは基礎研究の観点で興味深い。
また、比較対象として、類似の電子配置をもつ2価のMoO2カチオンの計算も行う。上記の化合物は、UとMoが酸化物を形成することで6価の閉殻構造になるが、UO2カチオンは直線構造、MoO2カチオンは屈曲構造をとることが報告されている。上記の構造に関する違いを解明するため、化学結合の解析を行うとともに、軌道エネルギーや全エネルギーの角度依存性も計算する。
余力があれば、フラグメントとなる原子の電子配置の影響も考察する。例えば、ウラン原子の基底状態は 5f^3 6d^1 7s^2であるが、7p軌道が占有された配置をとるウラン原子をフラグメントにすることで、アクチノイド原子の化学結合における7p軌道の寄与を見積もる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響が収束せず、出張予定がキャンセルされたため。次年度は、スパコンの使用料を増額する。

備考

当科研費の研究成果により、相対論的量子化学計算専用のプログラムDIRACの開発者グループの一員となった。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] Paul sabatier大学(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Paul sabatier大学
  • [学会発表] Theoretical study of the linearity of uranyl molecule based on relativistic correlation method2021

    • 著者名/発表者名
      Ayaki Sunaga
    • 学会等名
      Topical meeting on Condensed-matter Chemistry on Actinides (Kumatori meeting)
    • 国際学会
  • [学会発表] Theoretical study towards the detection of P, T violating interactions: analysis of enhancement factors and correction of QED effects2020

    • 著者名/発表者名
      Ayaki Sunaga
    • 学会等名
      5th Committee of circuit for the scientific technical revolution based on the precise measurement
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Relativistic study on the linearity of uranyl molecule2020

    • 著者名/発表者名
      Ayaki Sunaga
    • 学会等名
      GIMRT Joint International Symposium on Radiation Effects in Materials and Actinide Science
    • 国際学会
  • [学会発表] Relativistic many-body calculations on molecules including effective QED potentials2020

    • 著者名/発表者名
      Ayaki Sunaga
    • 学会等名
      Fundamental Sciences & Quantum Technologies using Atomic Systems
    • 国際学会
  • [学会発表] Relativistic correlated calculations with effective QED potentials2020

    • 著者名/発表者名
      Ayaki Sunaga
    • 学会等名
      23nd DIRAC working Group Meeting, virtual via ZOOM
    • 国際学会
  • [備考] DIRAC program

    • URL

      http://www.diracprogram.org/doku.php

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公開日: 2021-12-27  

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