研究課題/領域番号 |
20K22563
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
棟方 涼介 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (40790275)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | プレニル化フェノール / プレニル化酵素 / 位置特異性 |
研究実績の概要 |
植物が生産するプレニル化フェノール類は約1000種類に及び、病害虫に対する化学防御に寄与する他、人の健康維持・向上に貢献する薬理活性を示すなど、非常に多機能な化合物群である。これらの機能の発現にはプレニル側鎖の存在が重要であり、プレニル側鎖はプレニル化酵素(Prenyltransferase: PT)によってフェノール母核に転移される。この時、個々の植物PTはフェノール基質の決まった位置にプレニル側鎖を転移させるという高い位置特異性を示し、この特異性が植物が種特異的な化学防御壁を構築する基となる。本研究では、植物PTのプレニル化位置特異性を担う触媒機構の解明を目指した。 目的達成に向けて、実験材料として互いに位置特異性の異なる2つの植物PTに着目した。つまり、これらのPTはいずれも同じフェノール化合物を基質として認識してプレニル基を転移するが、互いにその転移位置が異なる。予備実験において、このPTペアの全長を5つのドメインに分け、種々の組み合わせでドメインシャッフリングを行って20種のキメラ酵素を作製した。さらにタバコ属植物Nicotiana benthamiana一過的発現系を用いて、これらのキメラ酵素の位置特異性を調べ、この特異性に重要なドメインを推定した。2020年度は、これらの酵素のモデリング解析を進めた。さらに、種々の植物系統からフェノール基質に対する位置特異性のみが異なるPTペアを探索し、複数のペアを見出した。これらは、植物界全体で共通する位置特異性の制御機構が存在するかを精査する際に有用となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生化学実験は遅れがみられた。一方でin silico解析では位置特異性の解明に資するPT配列を複数得るなど進展がみられた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、遅れが生じていた生化学的解析に重点を置いて研究を進める。その結果を基に点変異導入を行い、位置特異性を担うアミノ酸を残基レベルの解像度で特定する。さらにこれらの実験で得られた知見を基に3Dモデルをリファインし、研究目的の達成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、生化学実験の実験量が予定よりも少なかったこと、予定していた出張がすべてキャンセルになったことが要因で残額が生じた。もともとの計画に従って、主な実験とする生化学実験等の消耗品費に充てる。
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