近年、欠食やシフトワークなどによる生体リズムの乱れに起因する肥満や心血管疾患、睡眠障害などが問題視されている。また、ビタミンA欠乏食の摂取により生体リズムが乱れること、ビタミンAの摂取が肥満や心血管疾患、睡眠障害などを改善することも明らかになっており、ビタミンA代謝の約24時間周期の日内変動が生体リズムとそれに起因する様々な疾患に関与していることが示唆されている。しかしながら、ビタミンAの代謝が生体リズムに与える影響は不明な点が多い。本研究では生体リズムにおけるビタミンAの機能をマイオカインに着目することで明らかにすることを目的とした。マウス筋管細胞C2C12細胞を用いて、骨格筋におけるビタミンA代謝の日内変動解析を行った。その結果、ビタミンA代謝酵素群の発現が24時間周期で変動すること、細胞の概日リズムを同調させることでレチノールによるレチノイン酸応答配列を介した点は活性が上昇することを見出した。また、ビタミンAに応答して発現が上昇するマイオカインTG2の発現が24時間周期で変動することを明らかにした。細胞外に分泌されたTG2が生体リズムに与える影響を解析するため、大腸菌で発現させたTG2を精製し、C2C12筋管細胞に作用させた。その結果、TG2によって時計遺伝子BMAL1の24時間周期の発現パターンがわずかに変化した。以上のことから、骨格筋において、ビタミンA代謝は24時間周期を示し、ビタミンA応答遺伝子であるTG2が細胞外に分泌されることで、生体リズムを調節する可能性があることがわかった。
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