研究課題/領域番号 |
20K22567
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
赤澤 隆志 宮城大学, 食産業学群, 助教 (00882276)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 卵白タンパク質 / 卵白タンパク質ペプチド / 抗肥満 |
研究実績の概要 |
卵白タンパク質を摂取することで脂肪の蓄積が抑制されることが報告されているが、活性本体となるペプチドは明らかとなっていない。本研究では、抗肥満作用を示す卵白由来の活性ペプチドを特定することを目的とする。 初年度は、卵白のペプシン消化物(EWP)中のタンパク質又はペプチドの分画法の検討と各画分の脂質と糖の消化吸収に及ぼす影響をin vitro評価系で解析した。EWPを透析膜(分画分子量14000)を用いて高分子画分(EWP-H)と低分子画分(EWP-L)に分けた。糖の消化に及ぼす影響を、合成基質(p-NPG)及び酵母αグルコシダーゼを用いて解析した結果、卵白、EWP、EWP-H、EWP-Lは阻害活性を示さなかった。脂質の消化吸収に及ぼす影響は、豚すい臓リパーゼ活性及び脂肪酸のミセル溶解性に及ぼす影響を解析することで評価した。卵白はリパーゼを阻害しなかったが、EWP、EWP-H、EWP-Lでは阻害活性がみられた。このことから、卵白のペプシン消化により、リパーゼ阻害活性を示す成分が生成されることが示された。ミセル溶解性では、オレイン酸のミセル溶解性に及ぼす影響を解析した。卵白、EWP及びEWP-Hはオレイン酸のミセル溶解性を低下させた。また、EWP-Hは最もミセル溶解性を低下させた。さらにEWP-Hはコレステロールのミセル溶解も低下させた。一方で、EWP-Lはオレイン酸及びコレステロールのミセル溶解性に影響しなかった。これらのことから、ペプシン消化物中の高分子画分(12 kDa以上)には、オレイン酸及びコレステロールのミセル溶解性を低下させるタンパク質が存在していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、in vivo評価系による卵白ペプシン消化物の抗肥満作用を検証する予定であった。しかし、ペプチドの大量分画装置(分取用等電点電気泳動装置)の開発に時間がかかり、動物実験に使用するサンプルの調製ができず、動物実験に基づいた活性の評価には至らなかった。一方で、in vitro評価系による活性評価では良好な結果を得ることができ、卵白ペプシン消化物中には、脂質の消化吸収を阻害するタンパク質又はペプチドが存在することが示され、一定の進捗があったといえる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施した実験(in vitro)から、ペプシン消化物の高分子画分(EWP-H)及び低分子画分(EWP-L)はリパーゼ阻害活性を持つことが示された。また、EWP-Hはオレイン酸及びコレステロールのミセル溶解性を低下させることが示された。以上の結果から、ペプシン消化物中には脂質の吸収を阻害するタンパク質又はペプチドが存在する可能性が示された。そこで、本年度は、EWP-H 及びEWP-Lが脂質の吸収と代謝に及ぼす影響を動物実験によって解析し、生体内で効果を示す成分を特定することを目的とする。 動物実験に使用するペプチドの必要量を確保するために、大容量の分取用等電点電気泳動装置を完成させる。本装置を用いてEWP-H 及びEWP-Lから大量分画したタンパク質・ペプチド画分(各5画分)をマウスに給餌し、脂質の吸収と代謝に影響する画分を特定する。次に、活性が見られた画分に含まれる成分を質量分析装置を用いて分析することで、抗肥満作用を示す活性ペプチドの特定を目指す。
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