本年度は卵白のペプシン消化物(EWP)をペプチド画分(EWPL)とタンパク質画分(EWPH)に分画し,それぞれの画分を食餌誘発性肥満モデルマウスに給餌し,脂肪蓄積抑制作用及び,耐糖能改善作用を有する活性画分を特定することを目的とした。 高脂肪高ショ糖食(HFSD),及びEWPL又はEWPHを10%量添加したHFSDを健常マウスに8週間自由摂取させた。飼育6~7週目において、耐糖能試験(経口投与OGTT及び腹腔内投与ipGTT)を行った。 EWPL群において,体重は低く推移し,精巣周囲脂肪組織重量及び肝臓コレステロール含量が低値となった。また,血中グルコース濃度も低値となった。これらの結果から,EWPLに脂肪蓄積抑制作用を有する活性成分が含まれることが示された。EWPLの給餌は糞への脂質排泄を増加させなかったことから,EWPLに含まれる活性ペプチドは,食餌脂質の吸収を阻害するのではなく,糖と脂質のエネルギー代謝の亢進に寄与することで脂肪蓄積を抑制していることが示唆された。等電点電気泳動法を応用してEWPLを酸性ペプチド画分と塩基性ペプチド画分に分画し,食餌誘発性肥満モデルマウスに給餌した結果,塩基性ペプチド画分から,血中のグルコース濃度及び中性脂肪濃度の低下作用が示された。これらの結果から,EWPLの塩基性ペプチド画分に糖と脂質代謝の改善作用を有する活性ペプチドが含まれていることが示唆された。 耐糖能試験(OGTT及びipGTT)では,EWPL群の血糖値曲線はHFSD群と比べ低く推移する傾向があったが有意な差はなかった。一方でEWPH群ではOGTTの血糖値曲線が有意に低く推移した。ipGTTでは,EWPHの給餌の影響は見られなかった。これらの結果から,EWPの未消化タンパク質画分には耐糖能改善作用を有する活性成分が含まれており,さらに消化管が標的臓器であることが示唆された。
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