研究課題/領域番号 |
20K22576
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森田 隆太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30866075)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | アミロース生合成 / 澱粉粒結合型澱粉合成酵素 / イネ / 澱粉 |
研究実績の概要 |
アミロースは澱粉の主成分の1つである。イネ胚乳においては澱粉粒結合型澱粉合成酵素I(GBSSI)がアミロース生合成を担い、その機能欠失変異体は「もち米」として利用されている。本研究ではイネの葉身・葉鞘といった栄養器官で発現する澱粉粒結合型澱粉合成酵素II(GBSSII)の機能解析を行うことで、イネの栄養器官におけるアミロース生合成機構とその生理学的な意義を明らかにすることである。 2020年度はCRISPR-Cas9法により作出されたgbss2変異体系統を用いた。これらの系統からDNAを抽出し、ターゲット領域の塩基配列を解析すると、塩基の挿入または欠失が起こっており、遺伝子の途中に終始コドンが挿入されていることがわかった。それらの変異体の葉身・葉鞘・根端をヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色すると、アミロースフリーの特徴である赤紫色に呈色した。またこれらの系統ではタンパク質レベルでGBSSIIが検出されなかったことから、gbss2変異体系統はgbss2の機能が欠失していることが確認できた。また、gbss2機能欠損変異体の葉鞘から澱粉粒を精製し、ゲル濾過法によりアミロース含量を測定したところ、ほとんどアミロースが含まれないことがわかった。一方で、gbss2機能欠損変異体の胚乳澱粉のアミロース含量は野生型と同程度であった。これらのことから、GBSSIIはイネ栄養器官におけるアミロース生合成を担う酵素であることがわかった。 また、gbss2を育成し、葉身・葉鞘における澱粉含量を測定したが野生型と違いはなく、その生育も野生型と差はなかった。これらのことから、イネは栄養器官にアミロースを蓄積する生理学的な意義は不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
gbss2機能欠損変異体を作出でき、GBSSIIがイネ栄養器官におけるアミロース生合成を担う酵素であることを明らかにできたため。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度は引き続き, gbss2機能欠損変異体を用いながら、イネ栄養器官におけるアミロース蓄積の生理学的な意義の解明を行う。またGBSSIとGBSSIIのリコンビナントタンパク質を作成し、胚乳と栄養器官におけるアミロース生合成機構の違いを酵素学的な観点から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で研究活動が行えない時期が続き、次年度使用額が生じた。次年度は本年度行えなかった酵素学的な研究に必要な機器・試薬の購入に充てる。
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