研究課題/領域番号 |
20K22579
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
青柳 悠也 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 助教(特定雇用) (20882195)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 農用車両 / 事故防止 / 人工知能 / リスク評価 / アラートシステム / トラクタ事故 / コンバイン事故 / 田植機事故 |
研究実績の概要 |
本研究では,農用車両のオペレータが,多様な条件下において事故防止のための適切な走行条件の選択を支援するA.I.の構築を目指している。本A.I.は,事故に係る機械・環境・人の情報から,総合的に事故のリスクを判断し,事故の危険性が高い場合のアラートや,事故回避条件の提示に応用可能な仕様を目指す。 2021年度の実績としては,教師データの改良が必要となり,走行シミュレーションにより教師データの強化を行った。また,教師データにおいて,機体の姿勢角や走行速度等の指標を用いた事故リスクを明らかにする必要があり,トラクタおよび田植機の挙動モデルの改良および立案を行った。トラクタモデルでは事故の危険性が高い15°を超える急傾斜地における駆動力の影響を考慮した4自由度の運動方程式を立案し,転倒リスクをより正確に評価できることが示された。田植機モデルでは,旋回時の転倒挙動を握可能なモデルを立案し,その機械的な特性が旋回時の不安定性の原因になっていることが示唆された。これらのモデルを用いて,傾斜角,路面粗さ,機体重心位置,走行速度などを変更した100万通り以上の数値実験の結果から機体の挙動に基づくリスク評価が可能となった。本モデルを用いることで,機体挙動および機体状態の条件の組み合わせにおけるリスクアラートの可能性が示された。また,農用自律移動車両における挙動シミュレータを開発し,異なるセンシングデバイスでの数値実験を行ったところ,センシングデバイスの精度によって事故リスクが増加することが示された。このことから,オペレータへのアラートだけでなく自律移動にも対応した,事故防止技術の開発の必要性が示唆された。 これらの成果について,英文学術雑誌に1報の研究論文が受理され,英文誌に1報の研究論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,A.I.の精度検証を行いながら,リスク評価に適したモデルを用いることとした。学習データでは,トラクタ事故とコンバイン事故の発生要因整理とリスク定量化を行い,比較・分析することで危険度の高い事故要因と事故事例のリスクが明らかにした。これらの結果から,学習データにおける要因の選定と,教師データ(事例のリスク値)の作成が可能となった。また,走行シミュレーションにより機体の姿勢角や走行速度等の指標を用いた事故リスクを明らかにするため,トラクタおよびコンバインの挙動モデルの改良および立案を行った。コンバインモデルでは,旋回時に発生する遠心力を考慮した挙動を評価でき,トラクタモデルでは事故の危険性が高い15°を超える急傾斜地において,転倒リスクをより正確に評価できることが示された。さらに,田植機モデルでは,旋回時の転倒挙動を握可能なモデルを立案し,その機械的な特性が旋回時の不安定性の原因になっていることが示唆された。これらのモデルを用いて,傾斜角,路面粗さ,機体重心位置,走行速度などを変更した100万通り以上の走行シミュレーションを実施し,機体挙動に基づくリスク評価のための学習データを作成した。本学習データを整理し,利用することで,危険状態の組み合わせについて予測可能であることが示唆された。加えて,農用自律移動車両における挙動シミュレータを開発し,異なるセンシングデバイスでの数値実験を行ったところ,センシングデバイスの精度によって事故リスクが増加することが示された。このことから,オペレータへのアラートだけでなく自律移動にも対応した,事故防止技術の開発の必要性が示唆された。 これらの進捗状況から,今後,査読付き論文への投稿など複数の専門家からの検証を受け,本システムの実現可能性について明らかにする予定である。このことから,本研究進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本研究成果について総括し,事故発生の特徴抽出による本システムの実現場への適用可能性について明らかにする。ここでは,PCやスマートデバイス等におけるアウトプットをみて,実用化に向けた技術提案を行う。これらにより得られた各年度の成果は,本研究費の助成の基,学会や論文誌にて公表予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画時点では,現地調査の実施を計画していたが,新型コロナウイルス蔓延の影響を受けて,計画の前倒しや先送りで対応していたが,成果報告に到達するまでに時間を要したことと,2021年度投稿した論文の査読を受けての実験の修正に大幅な時間を要したことにより,当初予定していた本システムの総括に関する論文執筆が完了しなかった。論文の掲載料などを支出するために次年度に予算を繰り越した。本予算は論文掲載および査読結果を受けての追加実験のために適切に執行する。
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