研究課題/領域番号 |
20K22581
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
住田 卓也 滋賀県立大学, 環境科学部, 講師 (90881136)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 植物病原菌 / 宿主侵入 / ユビキチン・プロテアソーム系 / タンパク質分解 / 付着器 |
研究実績の概要 |
報告者はウリ類炭疽病菌と灰色かび病菌において、タンパク質の選択的な分解系であるユビキチン・プロテアソーム系(UPS: ubiquitin-proteasome system)が、付着器による宿主侵入過程に関与することを明らかにしてきた。本研究の目的は,付着器を用いた宿主侵入に関連して植物病原菌のどのようなタンパク質がUPSを介した分解を受け、それが分解されることがどういう意味をもつのか?という疑問を明らかにすることである。具体的には、(1)宿主侵入に関連してUPSによる分解を受けるタンパク質の同定、(2)プロテアソームの受容体遺伝子RPN10破壊株の示す侵入能力の低下の原因解明、(3)病原菌のUPS関連因子の侵入プロセスへの関与の解明、(4)病原菌のUPSを介する侵入メカニズムの普遍性の広がりの解明、を目指している。 本年度は、病原菌・宿主間相互作用を解析する実験系構築のため、屋内での宿主植物の育成設備を新たに設け、栽培および接種の予備実験を実施した。また、変異株を含む病原菌を安定した状態で供試するための培養・保存方法の検討を行った。本研究で用いる実験生物は多岐にわたる(病原菌4種、宿主植物5種)が、概ね計画通り実験系を整備することができたと考えている。(2)へのアプローチの一つとして、ウリ類炭疽病菌の破壊株から生じた「侵入能力の復帰変異株」を用いた比較ゲノム解析を計画しており、対象菌株を培養しゲノム抽出に供した。サンプルのクオリティを確認でき次第、ゲノム配列の解読を外注する予定である。また(3)については、調査対象とするUPS関連因子として、ユビキチン化タンパク質のプロテアソームへの運搬に関わるシャトルタンパク質を選定した。出芽酵母のRad23、Dsk2遺伝子の病原菌における相同遺伝子の同定を行い、遺伝子破壊株作出の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は申請者が1人で研究を実施する予定であったが、とりわけ年度前半において新型コロナウイルス感染症の流行によって研究活動を含む業務全般に影響が生じたことから、計画の遂行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に整備した実験系を用いて、遅れている部分も含め当初の計画の内容通り、下記の解析を進めていく。 (1)ウリ類炭疽病菌のRPN10遺伝子破壊株と野生株のユビキチン化タンパク質の比較解析により、破壊株に特異的に蓄積するタンパク質を同定する。 (2) RPN10遺伝子破壊株の示す侵入能力の低下に関連する病原菌および宿主の遺伝子群を明らかにするため、侵入能力の復帰変異株を用いた比較ゲノム解析および野生株・破壊株間のRNA-Seqによる遺伝子発現比較を行う。 (3)病原菌のシャトルタンパク質遺伝子の破壊株を作出し、病原性や侵入能力について解析する。 (4) 付着器侵入を行う重要病原菌イネいもち病菌や,付着器を用いず気孔から侵入するトマト葉かび病菌のRPN10相同遺伝子の破壊株を作出し,病原性や侵入能力について解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行による学会出張の中止により、旅費の支出が減少した。次年度は計画に従って必要な物品の追加購入および成果の発表を行う。
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