研究課題/領域番号 |
20K22583
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
増田 優 東海大学, 農学部, 講師 (80420511)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | キク / 育種 / マップベースクローニング / 斑入り / キクタニギク |
研究実績の概要 |
栽培ギクは六倍体で自家不和合性という性質のために、これまで分子遺伝学的な解析が困難であった。そこで本課題では栽培ギクに非常によく似た性質を持つ二倍体キク属野生種キクタニギクGojo-0系統(自家和合性突然変異を持つキク属のモデル系統)を用いて、マップベースクローニング法などによって斑入り突然変異体(albino2)の原因遺伝子の単離を目指している。キク属ではこれまでマップベースクローニングの報告例が無いことから、先駆け的な研究としてキク属の分子遺伝学的解析の基礎的な知見を得られることが期待される。また、一般的に斑入りは重要な園芸形質であるが、栽培ギクでは斑入り品種は知られていないため、新品種の開発に繋がると期待される。 2020年度はナショナルバイオリソースプロジェクト広義キク属(広島大学)の研究グループの協力を得て交配・採種が行われ、albino2について2つの分離集団(約1,400粒と約2,800粒)の種子を入手した。albino2は発芽直後から形質が観察できるために大量の個体を扱うことが可能であり、今回の交配で充分な種子数が得られたことから高精度のマッピングが可能になると期待される。また、データベース上に公開されているキク属のSSRマーカーから、キクタニギクGojo-0系統のゲノム全体を広くカバーする74組のプライマーを選抜し、予備的な試験により有用性を確かめた。これらによりalbino2の原因遺伝子の単離に向けた準備が整えられたことから、候補領域の同定に向けたラフマッピングを進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の影響で、研究室の運営管理等に様々な支障が生じており、その解消のために多くの時間を取られることや、PCR実験等に用いる試薬やプラスチック用品などの入手が困難になっているため研究の遂行にやや遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は以下のように研究を推進する予定である。 ①ALBINO2遺伝子のラフマッピング:SSRマーカーなどを用いラフマッピングを続け、albino2候補領域の同定を行う。 ②次世代シーケンサー(Hi-seq)による斑入り・野生型個体の全ゲノム塩基配列の決定:次にalbino2と野生型個体を1個体ずつ、次世代シーケンサーにより全ゲノム塩基配列を決定(リシーケンス)し、Gojo-0系統の全ゲノム塩基配列をリファレンスに整列化して野生型とalbino2の間の多型解析を行う。 ③多型領域の高精度マッピングと候補遺伝子の同定:続いてalbino2候補領域中に存在する次世代シーケンサーにより検出された多型をdCAPSなどを用いてDNAマーカー化し、より大きな分離集団で高精度マッピングを行う。候補領域付近のコーディング領域にアミノ酸置換やストップコドンがある遺伝子があれば有力な候補となるが、無ければ解析する分離集団をさらに拡大してより高精度なマッピングを進め、塩基配列の変異などから、斑入り原因遺伝子候補を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時にはキク属の全ゲノム配列はドラフト版として公開されていたため、研究実施計画ではRAD-seqによるラフマッピングを予定していた。しかし、近日公開される予定の高精度シーケンスデータを用いることで、RAD-seqを行わなくてもラフマッピングが可能との情報を入手したため、RAD-seqの実施を変更した。代替としてSSRマーカーなどを用いたポジショナルクローニングによりラフマッピングを行う予定である。
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