栽培ギクは六倍体で自家不和合性という性質のために,これまで分子遺伝学的な解析が困難であった.そこで本課題では栽培ギクに非常によく似た性質を持つ二倍体キク属野生種のキクタニギクGojo-0系統(自家和合性突然変異を持つキク属のモデル系統)を用いて,マップベースクローニング法などによって斑入り突然変異体(albino2)の原因遺伝子の単離を目指した.一般的に斑入りは重要な園芸形質であるが,栽培ギクでは斑入り品種は知られていないため,新品種の開発に繋がると期待されるだけでなく,将来的なゲノム編集などによるキク育種の基礎的な知見を得ることを目標とした. 2021年度は,データベース上に公表されているSSRマーカーを用いたマップベースクローニングにより,albino2遺伝子候補領域の同定を目指してラフマッピングを行った.74組のプライマーを用いた結果,原因遺伝子座を含むと推定される連鎖群を見出し,さらに45組のマーカーを用いて当該連鎖群を解析することで,約30Mbの範囲ではあるが,原因遺伝子座候補領域を絞り込んだ. マップベースクローニングと並行して,2021年に発表されたGojo-0系統の染色体レベルの高精度遺伝子情報をリファレンスに,albino2系統と野生型のそれぞれのバルクDNAを用いて,次世代シーケンサーによる全ゲノム塩基配列決定を行った.また,栽培ギクへの応用に向けた基礎的データを得るために,管弁を特徴とする古典菊の一種である肥後菊などの全ゲノム塩基配列決定も行った.現在,得られたデータからalbino2と野生型の間の多型解析を進めており,検出される多型を元にdCAPS等のマーカー化を行うことで,より高精度なマッピングが期待される.
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