本研究を通じて、宇宙線を用いて樹木の内部空洞を調べる新手法を開発した。2つの測定対象に対し、実験を行った。まず、直径1.2mの輪切り木に対して、0.5mの空洞ありとなしでの測定結果の比較から、統計的に有意に空洞を検出できることを確認した。次に、2020年7月の豪雨で倒壊した、岐阜県瑞浪市大湫町の円周11mの大杉を測定した。3Dモデルからシミュレーションで求めた宇宙線フラックスと観測データの比較により、1m以上の空洞は存在しないと結論づけた。その後保存のために大杉は根元付近で切断され、実際に空洞が1m以下であったことが確認された。 本研究によって巨木に対する宇宙線を用いた空洞調査手法の有用性が確認された。今後、立木に対してもこの手法を適用し、巨木の保全に活用されることが期待される。
|