崩壊生産土砂量(V)は崩壊面積(A)を因子とした累乗式(V=αA^γ)で近似できることが知られるが(αとγは係数)、既存研究の崩壊深や崩壊面積の値が必ずしも正確ではないことや基礎データに崩壊面積の偏りが存在すること、地質分類が考慮されていないといった問題点があった。そこで本研究は、兵庫県丹波市と広島県広島市の地質の異なる山地において、土石流災害発生前後のLP地形データ(レーザープロファイラ計測、1m分解能)を用いた標高値の差分計算により崩壊生産土砂量を求め、α値・γ値を計算した。その上で、α値・γ値に及ぼす崩壊深や地質の影響を明らかにすることを目的とした。 令和3年度は、令和2年度に解析した2種類の地質データ(丹波帯頁岩砂岩、花崗岩類)に対し、4種類の地質データ(超丹波帯砂岩、流紋岩類、苅田層泥岩、玖珂層泥岩)を新たに加えた。これら6種類の地質を火成岩類と堆積岩類に分類して考察した。 本研究では、V=αA^γの累乗式で近似されるAとVの関係は、全ての地質で決定係数が高くなり、地質に関係なく概ねこの式でVを推定できると考えられた。さらに、α値とγ値には負の相関があり、崩壊面積に対する崩壊深の増加割合が大きくなるとγ値が増大することがわかってきた点に意義がある。また、既存研究では、α値・γ値と地質との関連性についての議論がほとんど無かったが、本研究では火成岩類はα値が大きくγ値が小さい傾向があり、堆積岩類はα値・γ値が広範囲に分布していることを明らかにした点も重要である。これらのことから、地質による崩壊形状の分布特性の違いが、崩壊生産土砂量推定式のパラメータα値・γ値に影響を及ぼしていると考えられた。
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