研究課題/領域番号 |
20K22596
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
金子 信人 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(南勢), 任期付研究員 (50886265)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ニホンウナギ仔魚 / レプトセファルス / 成長 / 成長関連遺伝子 / 健苗性 |
研究実績の概要 |
本申請は、飼育下のニホンウナギ仔魚に起こる成長停滞の原因解明を目的とし、初期成長に関わる遺伝子の網羅的解析と、他魚種で重要とされる成長因子に着目した分析を組み合わせて、仔魚の成長制御機構を明らかにする。初年度は、特に後者の分析を中心に実施し、成長ホルモン(GH)とインスリン様成長因子(IGF)-Iおよび-IIの解析を主として行った。 1) ニホンウナギ仔魚におけるGHとIGFの季節的変化:海水かけ流し飼育を行ったニホンウナギ仔魚を80日齢まで定期的にサンプリングして、gh、igf-1、igf-2の遺伝子発現量を調べた。その結果、いずれの遺伝子も7日齢で最も高く、その後徐々に減少した。また、いずれの遺伝子も12-18日齢時点で小さなピークを示し、その後再び減少した。この時期に仔魚は内部栄養から外部栄養に切替えると考えられていることから、初回給餌の影響を受けているものと考えられた。ghとigf-1はその後も80日齢まで低値を維持したが、igf-2は微増を続けた。このことは、ニホンウナギ仔魚は他魚種と異なり、igf-2が成長に重要な因子である可能性が考えられた。 2) GH、IGFに対する絶食と再給餌の影響:10日齢と20日齢の仔魚を用いて5日間の給餌、絶食あるいは2日間の絶食後3日間の再給餌を行う試験を行い、全体におけるgh、igf-1、igf-2の遺伝子発現量を調べた。飼育試験の結果、体サイズは給餌群で最も高く、絶食群で最も低く、再給餌群で中間値を示した。gh量はいずれの日齢においても絶食群で増加して再給餌で減少した。一方で、igf-1とigf-2量もghと同様の変化を示した。gh量は負のフィードバックによる発現量増加と推察されるが、igfについては他魚種でまったく見れれない変化を示した。このことは、ウナギ仔魚の成長制御メカニズムの特殊性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた飼育試験、すなわち絶食再給餌試験、ならびに季節的変化および日内変動を調べる試験をすべて実施し、サンプルを得た。うち季節的変化を調べる試験においては、計画書通り飼育条件を変えた群を設け、同じくサンプルを得ている。また既知の成長関連遺伝子のうち、gh、igf-1とigf-2についての測定系を確立し、いくつかのサンプルについては分析を終了しているため、おおむね順調に推移しているものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ニホンウナギ仔魚の初期成長に重要な遺伝子のスクリーニングを実施するため、絶食再給餌試験のサンプルから数個体を選択してRNA-Seqの分析を委託する。また、ウナギ類のゲノムデータベースから、IGF結合蛋白(IGFBP)ならびにトランスフォーミング増殖因子βのクローニングを実施し、リアルタイム定量PCRの測定系を確立する。得られたデータを統合し、本種仔魚の成長制御機構の解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大に伴い、国際学会ならびに国内学会が中止あるいはオンライン開催になったため、出張費が減額となった。 また、RNA-Seqの分析委託を2021年度に変更したため、初年度は物品費の計上が増加している。
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