本研究は、林地残材を用いたバイオマス発電の温室効果ガス排出量について、①LCAを用いた定量的な算出、②化石燃料等を由来とする電力との比較、によりバイオマス発電の優位性を明らかにすることを目的とした。 第1に、本研究におけるGHGとしての環境負荷項目とシステム境界、GHG排出量の算定方法について、先行研究等を参考にそれぞれ設定した。また、林地残材を、森林の伐採に伴って発生する枝条、追い上げ材等の端材、未利用間伐材など通常では利用されない木質バイオマスと定義した。 第2に、データの収集について、北海道を対象とするものは、A素材生産事業体による6事例のほか、北海道水産林務部が実施した事業による6事例を収集した。北海道外を対象とするものは10県における14事例を収集した。 第3に、算定したGHG排出量のついて、北海道を対象とするものは、ボイラー形式と発電効率を組み合わせた複数のシナリオに基づいてGHG排出量を算定した。その結果、商業電力(北海道電力・2015年度)をほとんどのシナリオで下回る結果となった。北海道外を対象とするものは、発電側設備についても実績値を用いて算定した。GHG排出量は0.23~0.38kg-CO2/kWhとなり、立地地域の商業電力からの削減率は30.8~60.3%であった。 第4に、算定結果をもとに感度分析を実施したところ、輸送距離条件よりも送電端発電効率がGHG排出量を大きく左右することが示唆された。他方で、国が検討している木質バイオマス発電におけるGHG排出量基準と比較した結果、基準値(180g-CO2/MJ)については全事例が下回ったものの、基準値の50%削減については約半数が、基準値の70%削減については、全事例で下回らなかった。算定条件等が確定していないものの、国が検討している基準値は厳しい設定であることが考えられた。
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