研究課題/領域番号 |
20K22609
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
島元 紗希 新潟大学, 自然科学系, 助教 (90875395)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 骨格筋タンパク質分解 |
研究実績の概要 |
本研究では、骨格筋細胞内の3-メチルヒスチジン(3-MeHis)が既知のタンパク質分解経路に与える影響とミオシンの重合体形成に及ぼす影響を調べ、ミオシンタンパク質の分解を惹起する機構の解明を目的とし、これまで注目されていなかった3-MeHisの生理作用の解明を目指す。 令和2年度は、培養骨格筋細胞としてC2C12培養筋管細胞を用いて、培地中への3-MeHisの添加が濃度依存的(0、1μM、10μM、100μM)に筋原線維タンパク質を減少させる実験モデルを構築した。濃度検討の結果より、C2C12培養筋管細胞への最適添加濃度は10μMとした。C2C12細胞に対する3-MeHisの添加実験を行った結果、3-MeHisの添加により、ミオシン・アクチンのmRNAの発現量を変化させることなくミオシンタンパク質量が減少する現象を見出した。また、細胞培養に加えて、骨格筋組織のホモジネートを使ったタンパク質分解の実験モデルにおいても筋原線維タンパク質を減少させる3-MeHisの作用を確認した。 さらに、3-MeHisがC2C12培養筋管細胞におけるカルパイン系、プロテアソーム系、オートファジー系タンパク質分解に及ぼす影響を調べた。その結果、オートファジー系のマーカータンパク質であるLC3Bの発現量が増加したことから、オートファジー系タンパク質分解が促進している可能性が示された。カルパイン系、プロテアソーム系については現在分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養骨格筋細胞としてC2C12培養筋管細胞を用いて、3-MeHisの添加が筋原線維タンパク質を減少させる実験モデルを構築した。培養骨格筋細胞に対する3-MeHisの添加が筋原線維タンパク質を減少させる現象を確認することができた。しかしながら、新型コロナウィルスによる影響を受け、計画通りの予定で実験が進まず、3-MeHisのタンパク質分解系へ与える影響については、当初予定していたカルパイン系、プロテアソーム系の分析が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、令和2年度に予定していたカルパイン系、プロテアソーム系タンパク質分解への3-MeHisの影響を引き続き調べる。3-MeHisによる影響を受けている可能性が考えられる分解系について、in vitroの活性測定系(J. Biochem. 1994. 115: 257-269; J. Nutr. Sci. Vitaminol. 1996. 42: 491-496; Mol. Cell. 2016. 64: 835-849)を用いて、3-MeHisが各タンパク質分解系の活性に直接的に及ぼす影響を調べる。加えて、3-MeHisを添加した培養骨格筋細胞におけるthick filamentの微細構造の観察を電子顕微鏡法により行い、3-MeHisがthick filamentからのミオシン分子の脱落・遊離に関与するか否かを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる影響を受け、計画通りの予定で実験が進まず、本来申請していた予算を使い切ることが困難であった。 まずは、令和2年度に行う予定であったタンパク質分解系の酵素活性を分析するためために予算を使用する。また、令和3年度は電子顕微鏡を用いた定性的分析を計画している。所属大学には共通利用機器として電子顕微鏡があり、技術指導を受けることができるが、初めて使用する機器であるため消耗品の調達等に予算を使用する。
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