本研究では、骨格筋細胞内の3-メチルヒスチジン(3-MeHis)が既知のタンパク質分解経路に与える影響とミオシンの重合体形成に及ぼす影響を調べ、ミオシンタンパク質の分解を惹起する機構の解明を目的とし、これまで注目されていなかった3-MeHisの生理作用の解明を目指す。 令和2年度は、C2C12筋管細胞への3-MeHisの添加(10μM)が筋原線維タンパク質量を減少させることを見いだした。令和3年度は、3-MeHis培養骨格筋細胞としてC2C12培養筋管細胞を用いて、培地中へ最終濃度が10uMになるように調整した3-MeHisを添加し、骨格筋細胞のタンパク質分解系に与える影響を調べた。その結果、ユビキチンプロテアソーム系タンパク質分解の律速酵素であるユビキチンリガーゼ(Atrogi-1/MAFbx、MuRF1)m R N Aの発現が添加48時間後に有意に増加した。また、Atrogin-1/MAFbxタンパク質発現量も3-MeHisの添加により有意に増加した。さらに、筋原線維タンパク質のユビキチン化レベルを調べた結果、3-MeHisの添加により有意に増加した。 一方、オートファジー系タンパク質分解のマーカーであるLC3BおよびBeclinのmRNAとタンパク質発現を調べた。3-MeHisの添加48時間後のLC3B、Beclin1 mRNAの発現量に影響は与えなかったが、LC3BII/LC3BIの発現比およびBeclin1タンパク質の発現は対照区と比較して有意に増加した。 以上の結果より、C2C12への3-MeHisによる筋原線維タンパク質の減少は、ユビキチンプロテアソーム系およびオートファジー系タンパク質分解の促進が起因している可能性が示された。
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